環境政策

環境調査と環境アドボカシーで歩いた世界  青山貞一最終講義

 この1月20日に行いました私の最終講義の動画です。

同僚教授が1080pの高精度 HDで撮影してくれましたのでPC画面を一杯にしてご覧頂けます。

お暇な ときにご覧頂けると幸いです。

http://www.youtube.com/watch?v=eruE9AkoScg YouTube HD版

なお、当日は雪が降る寒いなかご参集いただきました方々に深く感謝いたし ます。

<動画概要>
20012年1月20日に行われた東京都市大学同大学院教授の青山貞一最終講義の全容 です。

青山が大学卒業後、現在までたどった環境問題、環境アドボカシー、 NPO/NGO支援、その財政基盤設立のために自前の技術を最大限生かし設立した環 境総合研究所、設立あるいは代表などとなって活動した

NPO/NGOなどの足跡を振 り返っています。

青山のミッション&スタンスは、「環境分野で社会正義を実現すること。国際的 視野をもちながら、同時に第三者的立場の研究者として環境問題の現場に積極的 に関わること」です。

世界最大のNGO、米国のシエラクラブの専務理事が日本で唯一の「闘うシンクタ ンク」といわしめた環境総合研究所(東京都品川区)は1986年に青山貞一と 池田こみちが資本金を拠出し株式会社として設立しました。

「湾岸戦争の環境影響調査」「巨大公共事業の環境影響調査」、「所沢ダイオキ シン測定分析調査」、「東京渋谷の恵比寿ガーデンプレイス住民環境アセス」、 「全国で10万人規模の市民が参加して行っている松葉ダイオキシン調査」はじ め「3.11の福島放射線調査・津波被害調査」に至るまで膨大な自主調査、自 主-研究も、精細な動画で紹介されています。

本動画は大学の同僚教授、藤井先生とゼミ学生・院生がHD版(1080p)の高精度 ハイビジョンで撮影されたもので、使用したパワーポイント(480p)よりはるか に高精度な撮影画像となっており音声もラインからとっております。

編集は青山 自身が高精度HDをそのまま生かしていますので、PC画面一杯にしても十分視 聴の耐えるはずです。 講演時間は約1時間10分、当日は青山貞一に引き続き同僚の宮坂榮一教授も最終 講義を行いました。

独立系メディア E-wave Tokyo(東京都品川区)

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がれき広域処理の本質的問題 池田こみち・青山貞一

がれきの広域処理が全国的社会問題となっています。

 政府は広告代理店を使い巨額の広告費で新聞、テレビで一方的 にCMを流し、事務連絡で基礎自治体にがれきの処理を押しつけ ています。  

独立系メディアE-wave Tokyoの本動画は、この政府の動きを察 知し昨年春から一貫して関わってきました池田こみち氏にさまざ まな角度から青山貞一がインタビューするとともに、詳細編では 討議を行っています。

 ご覧頂ければ分かるように、環境省のこの間の対応は、到底、 民主主義国家とは思えないものであり、かつ非科学的なものです。

◆池田こみち・青山貞一:がれきの広域処理の本質的問題  詳細編(約1時間)You Tube http://www.youtube.com/watch?v=PbaPles54N8&feature=youtu.be

◆池田こみち・青山貞一:がれきの広域処理の本質的問題  要約編(約12分)You Tube http://www.youtube.com/watch?v=ncCbPfMNsx8&feature=youtu.be  

なお、以下は池田こみちさんのこの問題に関する一連の論考、 ブログ、講演動画などです。ぜひ参考にしてください。

◆池田こみち:広域処理は問題の山、「がれき、復興足かせ」疑問 東京新聞 >    http://eritokyo.jp/independent/ikeda_tokyonp_20120215.pdf

◆奈須利江:議論無く受け入れ疑問、「広域処理考え直すべき」 東京新聞 >  http://eforum.jp/nasu_tokyonp_20120308.pdf

 3月11日東京でこの分野の専門家によって開催されましたシンポ > の動画(青山が編集、ただしこのシンポのパネリストになっていま せん)を公開しています。

●特集:震災がれきの広域処理を考えるシンポ―法的問題・安全性を問う >  (全4時間)

◆池田こみち:災害廃棄物広域処理の環境面からの妥当性について You Tube >    http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=Mfbd-JTjn1s

 ◆奈須りえ :財政・地方自治制度・民主主義の論点から You Tube >  
 http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=0G6NEFTkoes

 上記のうち私の研究の同僚であります池田こみち及び奈須さんの > 動画に問題の所在があります。それぞれ30分ですが、ぜひ一度ご > らん下さい。 > >  以下は当日配布した池田のレジメとパワーポイントです。これもご覧 > 下さい。

◆池田こみち:災害廃棄物広域処理の環境面からの妥当性について
    震災がれきの広域処理を考えるシンポ・パワーポイント  http://www.eforum.jp/komichiIkeda_koikishori_sympo120311.pdf

◆池田こみち:災害廃棄物広域処理の環境面からの妥当性について
   震災がれきの広域処理を考えるシンポジウム・レジメ
http://www.eforum.jp/ikeda20110311/ikeda-debriswideareatreatmetissue.pdf

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長野県に見る広域ごみ処理計画の行き詰まり  池田こみち

 春爛漫、東京の桜も満開を迎えた。入学式に桜、平和な春の光景だ。

 新しい年度になっていろいろな計画、事業が動き出す季節でもある。新年度初日に長野県の岡谷市でごみ問題の学習会が開催された。そこで見えてきた日本の自治体がかかえるごみ処理の課題をまとめてみたい。

 4月1日夜7時、長野県岡谷市のイルフプラザ*1)の講義室には、霙が降る寒い中、大勢の市民が集まった。信州生活者ネットが主催する「ごみ処理問題を考える」と題した学習会である。依頼された演題は「大型ごみ処理施設に莫大な税金は使わせない!私たちにできること」と、なかなか過激である。まず、この地域の現状を説明しておこう。

 長野県には10の広域連合があり、岡谷市を含む地域は「諏訪広域」といい、長野県のほぼ中央に位置している。構成自治体は6市町村だがごみ処理に関しては、諏訪南(茅野市・原村・富士見町)と湖周地域(岡谷市・諏訪市・下諏訪町)に二分されている。

 Image32 図① 長野県の広域行政地図

それぞれの地域では、構成自治体の人口や産業構造、ごみの排出量などが異なるため、なかなか一体的なごみ処理が行いにくい状況にある。諏訪南地区では、数年前から新たに【灰溶融+焼却炉】の新設計画が持ち上がったが、結果的に合意が得られず頓挫している。同様の混乱が湖周地域でも数年続いていた。

 現在、岡谷市、諏訪市、下諏訪町にはそれぞれごみ焼却施設があるが、いずれも古く建て替えの時期が迫っている。規模が小さく古いため、基準値はクリアしているものの、結構高い濃度のダイオキシンを排出しているのだ。一方、焼却灰の埋立処分場も余裕がなく、抜本的にごみ処理のあり方を見直さなければならなくなっていた。そんな折、国の交付金を利用するのであれば、やはり【灰溶融+焼却炉】か【ガス化溶融炉】でないと、ということになり、平成17年3月に「湖周地域ごみ処理基本計画」と「廃棄物循環型社会基盤施設整備事業計画」が策定され、新たな施設は【灰溶融+焼却炉】とし規模は136t/日、費用は80億円、設置場所は岡谷市の現焼却施設跡と決定さた。

 しかし、計画の実現に向けて議論を進める過程で、2市1町の間では費用負担のあり方などを巡り混乱が続き、当初2011年には稼働する予定が、すっかり遅れるどころか、わずか4年で新たなごみ処理基本計画を策定する羽目となったのである。首長や行政相互の主張がかみ合わないことに加えて市民の間でも、灰溶融炉は各地で事故が多発するなど技術的にも未熟ではないか、あらたに80億円もの税金を投入して借金を次世代に残すのはいかがなものか、といった議論も噴出し、計画は絵に描いた餅となったのである。

Image4図②;2市1町のごみ量

Image5 図③:リサイクル率のグラフ

 それよりも何よりも、計画の前提となったごみの減量化や資源化が計画通りに
進んでいないという致命的な問題が明らかとなったのだ。①現在の焼却炉が古くなった、②処分場も満杯になる、③新しい溶融炉や焼却炉を作って灰を減らさないと、という三段論法は事実上破綻している。基本計画には申し訳のように、ごみ排出量減量化目標として平成22年度までに平成9年度比6.2%の削減、平成30年度までに同11.2%削減としたものの、基本計画作りに市民は全くと言って良いほど参加していないため、目標が設定されていることも十分周知されておらず、2市1町の市民の間には新たなごみ処理施設の建設問題に対する温度差が広がっていたのである。そもそも、20年でわずか11%の削減目標とはあまりにみみっちい。

 新年度を迎え、新たな基本計画が公表されるようだが、これもコンサルタントに委託して策定されたもので、どこまで市民が自分たちの問題として参加し、監視しているかは心許ない。

 こうした状況は全国各地で見られる課題である。一般廃棄物の処理は基礎自治体の重要な仕事であるが、それは、ごみ処理施設の整備以前に、どれだけ市民参加によって現状のごみ処理の問題点を明らかにし、将来の展望やビジョンを共有化して、問題解決に向けた対策を一緒に進めていけるかが問われている。

 新計画策定の裏では、新しいごみ処理施設の規模120t/日程度に縮小すべきだ、溶融炉より炭化炉の方がよさそうだ、民間委託も導入しては、といった議論が続いているようだが、それ以前にもっと議論すべき事がある。現在、この地域では、可燃物の割合が8割以上を占めており、その組成を見ると、紙ごみ、プラスチック類、生ごみ・木・藁などが大きな割合を占めている。まさに資源が煙と灰になっている。そうした実態をしっかりと見極めて、市民が自分たちの問題として新しいごみ処理のあり方を考えなければ問題の解決には繋がらない。

 学習会では、焼却炉に依存しないゼロ・ウェイストの事例も紹介した。国からの交付金の条件にばかり縛られず、市民参加で自立した廃棄物政策を立案することが問われている。そうすれば自ずとローテク、ローコスト、ローリスクをどう実現するか真剣な議論が出来るはずである。

 湖周地域はまさに諏訪湖をとりまく地域であり、地域の環境と産業を考慮した未来志向の廃棄物政策が検討されなければならないだろう。地域のごみ量、ごみ質を踏まえ、地域の人材や技術を活かして、市民が納得できるビジョンを描くことから始めて欲しい。そうすれば、みんなが活き活きとごみを減らして、資源化する行動に積極的に取り組むことになると確信する。ごみ処理計画を行政やコンサルタントに任せずに、将来の世代のためにも議会の役割、市民の役割を是非、果たして欲しい。諏訪から、長野初のゼロ・ウエイスト宣言が出されることを大いに期待したい。

*1)イルフプラザ
 「イルフ」という名称は、岡谷市出身の童画家武井武雄が「古い」という言葉を逆に読み、「新しい」という意味をつけたもので館の愛称である。集会施設や子供向けの施設が整っている。武井武雄の作品を集めた童画美術館も隣接している。イルフ童画美術館 http://www.ilf.jp/

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高速道路料金1000円で地球温暖化が加速するう!  青山貞一

 
 政府は高速道路料金1000円を開始し、全国各地の高速道路で交通量が3割から2倍と大幅に増加したことが分かった。

 大マスコミは、小沢代表秘書逮捕問題同様、高速道路料金1000円問題でも、国民はただ情報を垂れ流している。

 よく考えてみれば分かるように、京都議定書で日本政府が世界に公約した1990年に対比して二酸化炭素を2008年から2012年の間に6%削減する公約の達成がこれによりさらに遠のいた。

 一方で、地球環境問題でバカ騒ぎし、膨大な記事を垂れ流している大マスコミが他方で1000円で高速道路乗り放題を無批判で記事を垂れ流している様は、きわめて異常だ。
 

高速道路料金:「1000円」開始 県内通行量4割増

 ETC(自動料金収受システム)を取り付けた乗用車を対象に、高速道路料金を上限1000円とする大幅引き下げが始まった28日、県内の高速道路は昨年同期に比べ、通行量が約4割増加した。東北道でも、東北6県を中心に県外地域のナンバープレートを付けた、行楽客とみられる乗用車が多く見られた。

 東日本高速道路会社東北支社によると、同日午前0時から午後3時までに東北道西根インターチェンジ(IC)-松尾八幡平IC間を通行した車両は上下線で1万1500台(ETC利用でない車も含む)で、前年同期(8000台)に比べ44%増加した。東北地方の他区間も例年に比べ通行量は増えたものの、目立った渋滞はなかったという。

【山口圭一】

毎日新聞 2009年3月29日 地方版


 周知のように、日本は京都議定書における6%削減が達成できないばかりか、逆に二酸化炭素は13%も1990年に対比して増えている。

 日本政府は森林による吸収やいわゆる京都メカニズムなど、あれこれ姑息な方法を提案しているが、それらを総動員しても国際公約はまったく達成できそうもないのが現状であり実態だ。

 二酸化炭素が特に増えている分野は<石炭火力>と<自動車を中心とした運輸部門>と<民生・業務部門>である。1992年時点で全体の18%程度だった運輸部門は2003年度で21%、現在は推定でさらに超えているはずだ。運輸部門の85%-90%は自動車である。

 にもかかわらず、京都議定書の国際公約など何処吹く風とばかり、日本政府は高速道路料金を1000円として交通量が増えたと情報を垂れ流している。さらにそれをそのまま記事を書きまくっている大マスコミは一体なんなんだ!

 高速料金が1000円で乗り放題となったことで、一般道路から高速道路に切り替えた場合もあるだろうが、その多くは今まで遠出しなかった人々が新たに高速道路を使って遠出しているのであり、新たに走行量は間違いなく増えているはずである。

 となれば、今後2年間、政府・自民党の選挙対策的なバラマキ政策が続けば、間違いなく自動車由来の二酸化炭素は増加する。

 政府は百年に一度の金融危機だから、京都議定書、気候変動、温暖化なんてクソ食らえなのだろうか?

 それにしても相も変わらず政府・自民党が垂れ流す「大本営発表」を何ら識者らのコメントもなくそのまま垂れ流すマスコミは、情報操作による世論誘導以外のなにものでもない。政府広報はNHKだけで沢山だ!

 そもそもこのETC車への1000円料金は、国土交通官僚の天下り組織づくりと関係しているという情報もある。また民主党の道路政策のパクリとも言える。さらにフェリーなどがこの施策によって廃業に追い込まれる可能性すらある。

 マスコミは本来、それらの課題、問題点を徹底取材し、この種の自民党の選挙目当ての安直で、いい加減な施策を批判すべきであろう。

 底なしの日本の大マスコミの質の劣化には目を覆いたくなるものがある!

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廃プラリサイクル施設周辺の健康被害事件(杉並・寝屋川)をどう捉えるか 池田こみち・鷹取敦

 東京都二十三区の家庭ごみの処理・処分は、2000年3月までは「東京都清掃局」が一括して行い、2000年4月以降は各区が収集し、「東京二十三区清掃一部事務組合」が焼却等の中間処理を行い、焼却灰・飛灰と燃やさないゴミが、東京湾中央防波堤にある「東京都」の最終処分場に、埋め立てられている。

 杉並区の不燃ごみ(主にプラスチック類)は、杉並区井草4丁目の区立井草森公園に設置された中継所(杉並中継所)に集められ、圧縮されて、大型のトラックに積み替えられ、最終処分場に搬入されている。

 杉並中継所の周辺では、施設の稼働直後から深刻な健康影響の訴えが多発した。

 この問題については、青山貞一教授(武蔵工業大学環境情報学部教授)が、以前に独立系メディア「今日のコラム」(以下の3つのURL)に紹介しているので、本稿末尾で紹介する記事と合わせてご覧頂きたい。

■「杉並病」を風化させないために~研究者らで現場を実査~その1
http://eritokyo.jp/independent/aoyama-col9901.html

■「杉並病」を風化させないために~研究者らによる調査を巡る議論~その2
http://eritokyo.jp/independent/aoyama-col9902.html

■<今日の一枚>「杉並病」発症の現場
http://eritokyo.jp/independent/aoyama-todayone11.html

 2008年より「東京二十三区清掃一部事務組合」では、廃プラを「不燃ごみ」から「可燃ごみ」に変更することとなった(開始時期は区によって異なる)。多くの区では容器リサイクル法による一部のプラスチックの資源物としての回収を始めたため、一部のプラスチックはリサイクルされ、残りのプラスチックが焼却処理されている。廃プラ焼却の問題については別途大きな問題があり、以前から何度も紹介してきた。

 いずれにしても東京都二十三区では廃プラがそのまま最終処分場に搬入されることはなくなるため、杉並中継所で圧縮・積み替えを行う必要は無くなった。そのため杉並中継施設は、この2009年3月に廃止されることとなっている。これを報じる毎日新聞の記事によると、杉並中継所周辺では、今でも健康影響に苦しんでいる人がいるという。

 一方、大阪府寝屋川市では廃プラリサイクル施設の周辺で、杉並中継所周辺と似たような健康被害の訴えが多発して裁判となり報道でも何度か紹介されている。杉並中継所同様にプラスチックの圧縮過程に起因するものではないかと疑われており、同じ毎日新聞の記事に報じられているので、以下に紹介する。

 記事にもあるように、廃棄物はリサイクルすることが「いいこと」とされ、全国各地に同様のリサイクル施設が多数建設されている。しかし、少数派とはいえ、杉並や寝屋川で被害者が出ていることに目を向けずに、リサイクルは「是」としてこうした施設をつくり続けることには問題がある。昨今の廃プラスチック焼却の是非を巡る議論と一緒になって、焼却かリサイクルかが二者択一のように言われるのも問題だ。

 消費した後の製品を焼却してもリサイクルしても環境への影響は少なからず発生する。根本的な問題は、いかにごみ処理(焼却・破砕・圧縮等を経たリサイクルなど)をしなくて済む製品作りを進めるか、そのための仕組み作り、制度づくりが不可欠であり、本来の生産者責任(いわゆる拡大生産者責任)こそしっかりと問われるべきである。現状のように、すべてを消費者や自治体の「処理」に依存できるシステムは早急に見直しが必要である。

 この種の施設建設をめぐり地域分断や地域紛争が起こることは不幸なことであり、地域住民の闘いがより本質的なごみ政策の見直しにつながっていくことを望みたい。なお、寝屋川事件では、原判決があまりにも不公正かつ不見識であるとして原告側が控訴している。杉並でも寝屋川でも、裁判では施設の建設や稼働を認めた行政がその背後にあって、被害実態や被害者の救済に対する判断が軽視されがちであることが課題である。その意味でも、第三者的に被害者を支援する研究者や専門家の関与が鍵となる。

毎日新聞
http://mainichi.jp/life/ecology/news/20090118ddm041040094000c.html
ニッポン密着:「杉並病」ごみ施設3月廃止、被害今も 鈍い行政、住民不信感

 東京都杉並区で、多数の周辺住民が健康被害を訴えた「杉並病」の原因となった不燃ごみ中間処理施設「杉並中継所」が今年3月廃止される。稼働から13年、被害者の苦しみは続くが、杉並と同様に廃プラスチックを扱う大阪府内の施設周辺では、杉並病に酷似した症状を訴える住民が続出して問題化している。ごみを大量に生み続けるニッポン。杉並病問題は終わりではなく、始まりだったのではないか--。

 ベランダに布団を干す家が多い晴天の日、木村洋子さん(67)宅の窓は閉め切られていた。干した布団で寝るとせきや湿疹(しっしん)が出る。付着物質に反応するという。月10万円の年金暮らし。「何の楽しみもない。生きているだけ」と言った。

 中継所から約500メートル離れた練馬区の2階建てに住む。夫を胃がんで亡くし1人暮らし。中継所が稼働後間もなく勤務先の百貨店で立っていられないほどの疲労感に襲われ、目がかすんだ。帰宅後は食べた物を吐き、体中に赤い斑点もできた。過労と考え、98年、定年2年前に退職した。

 00年、居間で倒れ、救急車で運ばれた。目が見えなくなり体が揺れてベッドをつかんで耐えた。めまいの診断で入院後、自宅に投げ込まれた印刷物で「杉並病」を初めて知った。木村さんは、当初、中継所問題を知らなかった「被害者」だ。区職員に病状を訴えたが、その後連絡はなかった。

 宮田幹夫・北里大名誉教授の診断は化学物質過敏症。杉並区の依頼で被害者の集団検診をした経験を持つ宮田教授は「自律神経や眼球運動、視覚検査で異常が出ており、中継所近くの被害者と同じ症状。発症時期から考えても中継所の影響は間違いない」と語る。

 杉並病の特徴の一つは、被害者がありながら原因物質はいまだに特定されていないということだ。中継所から多くの化学物質が発生しており、国の公害等調整委が「特定できない化学物質」としたのに対し、都の調査委員会が00年に報告したのは「不燃ごみを処理する際に発生した硫化水素」で、07年の東京地裁判決も追認した。

 しかし、硫化水素説は揺らぎ始めている。自殺の手段として知られるが古くから温泉で発生しており、複数の医学・化学者は「今も続く症状は説明できない」と、広く化学物質説をとる。調査委会長の柳川洋・自治医科大名誉教授(公衆衛生)は「中継所稼働後の数カ月間、硫化水素が出たのは間違いなく主因だと判断した。しかし、その後の健康被害は調べていないので分からない」と振り返る。

 原因追究も含め一連の行政側の対応に被害者側が不信感を募らせ、多くが補償を申請しなかった。そこには、科学・医学的知見が定まっていない被害にどう対
応するか、決め手を欠く行政の姿がある。

 大阪府寝屋川市。環境NGO(非政府組織)代表で地元町内会長の長野晃さん(65)は「まさか足元で」と嘆いた。知人に杉並中継所のデータ調査を依頼された際、プラスチック圧縮過程で化学物質が発生する事実に驚いた経験があった。その3年後、地元自治体などから集めた廃プラを加工する民間施設が近くにでき、寝屋川市などが共同運営する廃プラ中間処理施設も昨年稼働した。隣接する施設の間に立つと甘酸っぱいにおいが鼻につく。地元では「廃プラ臭」と呼ぶ人もいる。

 民間施設が運転を始めた翌年の06年夏、津田敏秀・岡山大教授(環境疫学)が約1500人を対象に実施した健康調査では、施設から700メートル以内の住民は2800メートル付近に比べ、湿疹の発症が12・4倍、目の痛みが5・8倍になる結果が出た。左半身がしびれたまま食べ物を吐き続けた20代の女性もいる。

 しかし、住民による2施設の運転差し止め請求訴訟は昨年9月、大阪地裁が「化学物質は排出されているが、健康被害は認められない」と棄却(住民側控訴)。市や府も一貫して被害者の存在を認めず、住民への疫学調査もしていない。

 「病因物質の特定より、施設周辺で症状が多発している事実が優先ではないか。水俣病など公害の拡大は行政の放置の歴史だった」

 津田教授の指摘が杞憂(きゆう)と言い切れるかどうか。

 廃プラの中間処理やリサイクル施設は全国で700を超え、増加を続けている。
【宍戸護】 

◇跡地に廃プラ施設、区長は「設置せず」
 山田宏・杉並区長は、中継所跡地に廃プラ中間処理など化学物質を排出する施設は設置しない方針を明らかにした。東京都から施設を移管された際、20年度まで「ごみ施設」として使用するという条件があるが「現実に健康被害に悩む人たちがおり、同じような施設では廃止の意味がない。清掃関連施設として幅広く考える」という。

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■ことば
◇杉並病の経緯

 収集車が地域で集めた不燃ごみを圧縮して東京湾岸の処理センターに運ぶための施設「杉並中継所」が96年春に稼働後、周辺住民120人以上が目やのどの痛み、皮膚炎、倦怠(けんたい)感などを訴え、「プラスチックの圧縮過程で発生した化学物質が原因で健康被害に遭った」と主張した。中継所は00年に東京都から杉並区に移管された。02年には国の公害等調整委員会が申請者18人のうち14人の健康被害との因果関係を認めたが、これまで被害補償された人はいない。

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