経済・政治・国際

なぜ、小沢代表側近なのか~長野ルートと小沢ルート  青山貞一

 前号では、「なぜ、政権交代前夜なのか」と題し、東京地検特捜部(以下、特捜部と略す)による小沢一郎民主党代表の公設第一秘書の逮捕を巡る疑義について述べた。

 本号では、「なぜ、小沢代表側近なのか」と題し、異例、異常な特捜部による今回の小沢代表第一公設秘書の逮捕劇について述べてみたい。

 まず「なぜ、小沢代表側近なのか」の理由について、特捜部は、①時効が近づいていること、②西松からの献金が突出して大きいことをメディアに説明していた。 しかしながら、これら2つのの理由は理由になるようで実は理由にならない。

 たとえば道路交通法違反の場合を例にとろう。

 覆面パトの車の前を乗用車が追い越し走っていったと仮定する。この道路の法定速度は40km/hである。Aの車は60km/hのスピードで覆面パト車の前を走って行った。そして次のBの車は80km/hので走っていったとする。この場合、警察は、80km/hのBの車だけを捕まえ60km/hを不問に付すことは本来許されるわけはない。当然、Bの車の主は不公平感を持つだろう。

 今回の事件では、当初はあくまで各政治家からの政治資金管理団体から総務省に提出された政治資金収支報告書に記載された献金額をもとにから出発している。したがって、小沢氏の政治資金収支報告書の献金掲載額や件数が多いというだけでこともあろうか片腕とされる公設第一秘書をいきなり逮捕することには違和感がある。また圧倒的に多い自民党幹部議員について不問に付すというのでは、公正、公平の観点から理不尽である。

 周知のように、件数で多いのは圧倒的に自民党幹部議員である。また前号のリストには掲載していないが、長野県の村井知事と静岡県の石川知事など知事も2つの政治団体による献金リストにいる。

 村井長野県知事の場合、政治資金収支報告書に記載された献金額はパーティー購入関連の20万円だけであったが、先に逮捕した西松建設関係者の証言で1000万円の選挙資金が村井知事サイドに渡っていたという特捜部のリークがある。なぜ、このリークがあったのかを含め後述する。

 上記が前提である。腑に落ちないのは、にもかかわらず、なぜいきなり小沢代表側近なのかということであり、謎が深まるばかりだ。

.......

 ところで、「なぜ、小沢代表側近なのか」について、日刊ゲンダイ2009年3月6日号の3面に興味深い記事がある。出所は特捜部捜査に詳しい司法関係者とある。

 地検特捜部、自民党ルートは視野にない綱渡り捜査
 長野案件が潰れて小沢案件に切り替えの舞台裏

が記事のタイトルである。記事の核心部分は次の通りである。

 特捜部捜査に詳しい司法関係者は次のように述べたという。

 「そもそも西松捜査は、”長野案件”(注:長野県村井知事の側近が自殺した例の一件、青山)で終わらせるはずだった。東証第一部上場の社長まで逮捕して、違法献金をもらった政治家を一人も暴かないのはバランスに欠くという考え方からです。ところが、連日聴取していた村井県知事の側近が首つり自殺してしまい、長野ルートは潰れた。この失敗に焦った特捜部は慌てて、小沢ルートに切り替えたのです。小沢秘書を逮捕したことで、目的は達成できた。それに年度末までに事件のケリをつける検察の捜査習慣からしても、起訴までの20日を計算に入れると、今週が逮捕のリミット。これ以上、捜査を広げ、長引かせる気はありません。仮にあるとしたら”謀略捜査だ”と検察批判の世論が高まったときだけです」(捜査事情通)

 私はご承知のように「独立系メディア」の2月26日から2月27日にかけ、以下の3つの論考を書き掲載していた。

 いずれも村井長野県知事の側近中の側近の右近氏が任意で2009年2月21日、22日、23日の3日間、連続して東京地検特捜部の厳しい事情聴取を受け、事情聴取が終わった翌実の2月24日、長野市の電柱で首つり自殺していたというものだ。

●特集:西松建設裏金供与と村井長野県知事側近の自殺
◆青山貞一:①村井長野県知事の側近中の側近、首つり自殺
◆青山貞一:②村井知事周辺に多額選挙資金供与、西松建設関係者供述
◆青山貞一:③ダンマリ決め込む長野県議会、知事側近の自殺に関連し 

 この首つり事件は、全国紙ではほとんど大きく報じられなかったが、田中康夫知事時代、特別職、地方公務員として長野県に大学教授と兼務で勤務していていた私としては、西松建設の裏金が村井仁氏の長野県知事選挙の資金として1000万円渡されていたという特捜部のリークに非常に注目していたのである。

 何と、村井長野県知事は、政治資金規正法に基づく政治資金収支報告書ではパーティー券20万円分を政治団体に買ってもらっていただけとしており、これは献金リストにも入っていた。

 パーティー券20万円分だけで特捜部がその後知事となった村井長野県知事の側近中の側近の右近氏をたとえ任意とはいえ3日間も事情聴取するのは??と思っていたのである。

 すると、2月26日の深夜になって一部新聞が、「特捜部は逮捕した西松関係者から政治資金収支報告書に掲載されていない1000万円の多額な選挙資金が村井知事側に供与されていたことをつかみ、側近中の側近を任意で地検に呼び事情聴取していた」ことがわかったのである。

 もし、西松建設側から村井県知事候補(当時)に渡った1000万円の裏金献金が特捜部が右近氏の自殺をいぶかしがるメディアや県関係者らへの対応としてリークしたように事実であるとすれば、この長野ルートは明白な政治資金規正法違反となる。

 だがにもかかわらず特捜部は、長野ルートを立件しなかった、、いや出来なかったかと言えば、事情聴取した側近中の側近の右近氏が2月21日、22日、23日の実に3日に及ぶ事情聴取後の2月24日、こともあろうか長野に帰ってから首をつって死んだからである。当然、右近氏が死んでしまったので、当然のこととして起訴もできず、公判が維持できないと特捜部が立件を断念したのである。

 そうこうするうちに平成20年度末(3月31日)が近づいてきた。

 特捜部捜査に詳しい司法関係者の言によれば、上場企業の西松建設の社長まで逮捕した特捜部は、当初、長野ルートで幕を引く予定だったが、その思惑が消えてしまった。

 そこで急浮上したのが、政治資金収支報告書ベースで献金額が突出して大きい小沢ルートに切り替えたということになる。

 年度末まで一ヶ月弱しかないなか、東京地検特捜部は、焦って小沢ルートの立件に走る。

 そこでは、森喜朗、尾身幸次、二階派、加藤紘一、藤井孝男、川崎二郎、山本公一、旧橋本派、山口俊一ら自民党の総理、大臣、要職経験者などを捜査し立件化する時間的余裕がない、ということで圧倒的に数が多い自民党の代議士、すなわち自民ルートの捜査はなしということになったというのである。

.....

 だが、もとより西松社長を逮捕した時点で、特捜部が村井長野県知事の長野ルートに絞り、それが右近氏の自殺に焦り、そこで急遽、立件案件を小沢民主党代表の小沢ルートに変えたとすれば、特捜部の考えはあまりにも、安易であり、保身的なものでしかないと言わざるを得ない。

 要約すれば、3月末までに、逮捕した容疑者を起訴に追い込むとした場合、当初予定した長野ルートが村井知事の側近の自殺で潰れたため、逆算、すなわち残りの小沢ルートで起訴し立件するとなると、当該問題の担当者であった公設第一秘書の逮捕は3月上旬となるというのが特捜部の筋書きのようである。

 ちなみに、通常、ある者を警察か地検が逮捕した場合、遅くても最大22日目に地検は起訴、不起訴、起訴猶予、さらに略式命令請求のいずれかを決めなければならない。具体的には、大久保公設秘書は3月4日に逮捕されたので、東京地検による起訴、不起訴、起訴猶予、さらに略式命令請求の判断は遅くても3月26日までに決めなければならない。

 という意味では、上記の「捜査事情通」の話しは辻褄が合うのである。

 しかし、上記の特捜部の理由は、あまりにも役所仕事的な理由であって、自らの保身によりこともあろうか政権交代前夜の民主党代表である小沢一郎議員を逮捕することになりやしないだろうか? これについては前号で詳しく書いたので、本号ではこれ以上触れない。

 一言で言えば、これほど重大なことが東京地検特捜部のメンツや保身で勝手に決められて良いのかということだ。検察の保身によって、実質的に西松からの献金をもらっている自民党議員(全体の8割超)を野放し、大物議員らの秘書の事情聴取すらないというのは、きわめて公正さを欠く。

 特捜部の事情通は、先の証言のなかで、特捜部は「これ以上、捜査を広げ、長引かせる気はありません。仮にあるとしたら”謀略捜査だ”と検察批判の世論が高まったときだけです」と述べている。

 今でも多くの識者は有権者は、今回の特捜部のやり方に批判し、怒っている。、「検察はなぜかおかしい」という国民や識者の声は日増しに増えていることから、特捜部は単に小沢代表の公設第一秘書である大久保氏を何が何でも起訴に追い込むことではなく、司法の信頼を得るためにも、最低限、自民ルートの議員らへの事情聴取を行わなければならない。

 3月5日、くだんの自民党の大物議員は、こぞって西松側に献金相当額を返却する旨をメディアに話している。もし、それで不問に付されるなら、当然、そのことを以前から言明している小沢代表も受けた献金相当額を西松側に返却すればよことになる。

 いずれにせよ、今回の特捜部の捜査には多くの疑義がある。

 参考・引用
 日刊ゲンダイ 2009.3.6号

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なぜ、政権交代前夜なのか? 結果的に悪政に加担する東京地検特捜部  青山貞一 

なぜ、政権交代前夜なのか
結果的に悪政に加担する
東京地検特捜部

青山貞一 Teiichi Aoyama  March 2009

独立系メディア「今日のコラム」
 民主党小沢代表の公設第一秘書をいきなり逮捕した東京地検特捜部だが、国民が半世紀に及ぶ自民党のやりたい放題の悪政から、自らの手で総選挙により解放する「前夜」に、敢えて強制捜査に踏み切ったことに対し、多くの識者が疑問を呈している。

 たとえばO氏は、「今回の容疑は3年以上前の話で、なぜ今なのか違和感が残る。この時期の逮捕は国策捜査と言われかねない」と述べている。

 さらに政治評論家のY氏は、「国民にとっては悪夢のような展開です。自民党政権が続くということは、2大政党制がかけ声倒れに終わり、腐敗堕落による一党独裁が続くということです。消えた年金に象徴されるようなごまかし政治が続き、官僚機構がのさばり、一部の政治家と企業だけがいい思いをする癒着政治が続くことになる。ヘタをすればあと10年も暗黒政治がつづくことにもなりかねません」と述べる。

 言うまでもなく東京地検による今回の一件により、国民の間にいまだかつてなく盛り上がっていた政権交代の機運は完全に冷水をかけられた。

 それでも罪は罪、罰は罰という人はいるだろう。また自民党やNHKはじめ大マスコミは「国民に対し政治とカネにまつわる政治家の信頼を失墜させたことは間違いない」などと、「したり顔」の論評はある。

 また西松建設による政治家への資金のバラマキは国会議員、知事を含め数10人に及んでいるなか、なぜ小沢一郎だけなのかという問いかけに、東京検察特捜部は小沢陣営に渡った額が突出して大きいからなどと言っているようだ。

 しかし、小沢氏自身が3月4日朝の記者会見で述べているように、もし、あらかじめ企業からの献金であれば、「陸山会」でなく企業献金が認められている政党への献金として扱えばよいのである。そもそも数年間で2100万円という献金額に、いきなりの逮捕と強制捜査を敢えてこの時期に行うことが大いに問われるだろう。

 大メディアは検察のリークを鵜呑みにして、2100万円の献金額を突出しているなどといっている。しかし、これは数年間の総額であり、年間額にしてみると数100万円規模である。小沢代表系への毎年の個人、団体を問わず献金総額(数億円)からして、突出して大きいなどと言える額ではないだろう。連日、代目ディアが事実報道と言いながら、ことさら検察がリークする情報を垂れ流していること自体、いつものように「情報操作による世論誘導」となっていることを忘れてはならない。

 たとえばここ数ヶ月、日本の大メディアが神様のように拝みたてまつる米国のオバマ大統領が大統領候補だったとき、オバマ陣営が集めた政治資金は総額約7億ドル、約600億円であった。その9割は一般有権者からの献金であるが、残りの一割はかのリーマンブラザースはじめ金融投資銀行はじめ企業やロビイストなどの大口献金者からのものだった。 

 それよりもなによりも、この時期にいきなり小沢代表の側近を逮捕し、強制捜査で家宅捜査を大マスコミ注視の中で大々的、センセーショナルにに行うことが、民主主義に関しては後進国並みの今の日本社会全体に対し、いかなるマイナスの影響をもたらすかは計り知れない。それひとつをとっても今回の東京地検特捜部がしていることは異例であり、異常である。

 もとより西松建設問題は以前から指摘されていたことである。くだんの2つの西松建設関連の政治団体は2006年に解散している。もし、虚偽記載など政治資金規正法上の疑義があるなら、担当者を任意で地検を呼び「修正申告」を勧告すれば事足りたはずだ。

 そもそも政治資金規正法における政治資金収支報告書の虚偽記載の罰則は、5年以下の禁固刑あるいは100万円以下の罰金である。もし、容疑を認めた場合には裁判を伴わない略式命令請求、通称、起訴起訴により数10万円程度の罰金、仮に当人が否認をし続け、起訴された場合でも執行猶予付きの判決が妥当のものである。

 何をさておき、ここで重要なことは、国民から見放され内閣支持率が10%そこそこに低下した麻生政権や自民党、総選挙、解散から逃げまくっていた麻生政権にとり、この時期での小沢代表側近の逮捕劇が与える意味だ。政権与党にしてみれば、今回のはなばなしい逮捕劇は、まさに、これ以上ない絶妙のタイミングといえるものであり、小沢代表ならずとも検察のしていることは異常としかいいようもないものだ。

 いうなれば、実質的に独裁政権が半世紀続き、「政」「官」「業」さらには「政」「官」「業」「学」「報」、すなわち政治、官僚機構、業界、そして御用学者と御用メディアが結託し、税金を食い物にしてきた日本で、まさに100年に1度の政権交代の前夜を見計らって東京検察は、故意に意図的に政権交代のシンボルである小沢代表側に決定的なダメージを与えたことになる。

 永年、「政」「官」「業」「学」「報」による情報操作による世論誘導によって格差社会に陥れられ、正直者がバカを見続けてきた日本国民がやっとのことで自民党見限った。もし、ここで総選挙を行えば、自民党が歴史的大敗北することは間違いなかった。

 それを考えると、今回の東京地検特捜部の小沢代表側近への対応は、民主党ならずとも、東京地検による「国策捜査」であると言われても仕方がない。 もとより、政権交代直前に政敵を逮捕するというやり方は、東南アジア諸国の政治的後進国で起きていることであり、到底G7の国で起きることではないだろう。

 政権交代がかかる選挙直前での政敵やその周辺の逮捕はフィリピン、マレーシア、ミャンマー、シンガポールなど東南アジア諸国でよく起こる政治的謀略を連想させるものである。

 かつてUPIの記者で現在ビデオ・ジャーナリストの神保哲生氏は、「民主主義が未成熟な国では、権力にとっての最大の武器が軍事力と警察です。それに歯向かえばメディアも市民も殺されてしまう。そのため、誰も声を上げず、政治権力は益々暴走するのです。民主主義の進んだ先進国なら、仮に権力が暴走したとしても、市民社会は容認しない。メディアが真実を暴くでしょうし、検察は後半維持できません」と述べる。

 小沢代表は自民党政治家に忌み嫌われている。また大のマスコミ嫌いもあり大マスコミにも評判は良くない。だが、その本当の理由は、自民党の恥部にあたる政治手法を知り尽くしていることにあるからだ。他方、小沢氏は国政、地方を問わず選挙に強いこともある。

 さらに小沢代表は、いうまでもなくブッキラボーで愛想はない。だが小沢代表は日本にはめずらしいブレない、信念を持った政治家でもある。

 しかし、麻生はじめ小泉など同じ世襲議員でもブレまくり、庶民、国民など社会経済的弱者のことはそっちのけで弱肉強食の社会、格差社会を平然とつくってきたインチキ政治家とはまるで違う。

 半世紀に渡り政官業学報の癒着で利権を欲しいままにしてきた日本政治に、小沢代表は、日本社会を変えるためには自分が変わらなければダメとして政治生命を賭け、政権交代に挑んできた男だ。

 今回の一件が自民党の延命に手を貸すこととなり、先進国でも希な自民党の悪政がさらに5年、10年、15年と続く可能性もないとはいえない。

 あれこれ酷く言われながらも、民主党をここまで育ててきたのは小沢一郎の功績である。しかし、公設秘書逮捕問題への対応を一歩間違えば、今まで政治生命をかけ努力してきたことがすべてパーになる。それだけにすまない。日本の民主主義にとっても深い傷を負うことになり、場合によっては致命傷となるかも知れない。

 そうなれば、まさに政権交代なき日本は「暗黒社会」となる。

 確かに言えることは、今回の一件は当初センセーショナルであった。しかし、国民が冷静に今回の一件を考えれば、日本の将来の本筋は利権と手あかにまみれた自公政権の延命にあるのではなく、自らの手で何はともあれ政権交代を実現することにあると再度理解するはずだ。

 もちろん、小沢代表を含め今の民主党は第2自民党的な側面をもっている。多くの課題もある。だからといって日本の暗黒でやりたい放題、国民を愚弄し、格差者社会で生活苦に追い込む自民党政治このままを継続させることがあってはならない。

 ここは国民の認識、民度が大いに問われることになる!

 参考・引用
 日刊ゲンダイ 2009.3.5号
 

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原発はクリーン」は不適切!日本広告審査機構が裁定  青山貞一

 日本のテレビ、新聞など大メディアがスポンサーの顔色を見てニュースの取捨選択や番組制作をしていることは、今やよく知られるところである。

 今年3月の決算では、在京テレビ局の多くがテレビ事業単独で赤字が見込まれている。景気が極度に悪化してくると、一層、新聞社やテレビ局がスポンサーに気を遣うことが憂慮される。
 
 「独立系メディア」では、以前から日本の大メディアが海外で起こった原発事後や核燃料廃棄物再処理などに関連した事故を、まともに報道していないことを実例を挙げ批判してきた。

 ※独立系メディア アーカイブ<原発・核>
 ※青山貞一:スウェーデン原発事故と日本のメディア
 ※青山貞一:英セラフィールド再処理施設から漏れ出る放射能汚染(1)

 そんな中、社団法人日本広告審査機構(通称、JARO)が東京電力など電力会社でつくる電気事業連合会(通称、電事連)が雑誌に掲載した広告に関連し、原発がCO2を出さないというだけで「クリーン」であるという表現は適切ではない、という裁定を電事連に出していたことが分かった。この裁定は昨年11月25日付で出されていた。

 下はそれを伝える西日本新聞の記事である。

「原発はクリーン」不適切と裁定 電事連広告にJARO裁定

西日本新聞 2009年1月30日 20:10カテゴリー:社会

 電気事業連合会(電事連)が雑誌に掲載した「原子力発電はクリーンな電気のつくり方」という広告のコピーについて、日本広告審査機構(JARO)が「原子力発電にクリーンという表現を使うことはなじまない」と裁定し、電事連に表現の再考を促していたことが30日、分かった。

 裁定は昨年11月25日付。JAROが原発の広告について、再考を求めるのは異例という。

 JAROは神奈川県の男性の苦情申し立てを受け、学識経験者7人でつくる審査委員会で審議。「安全性について十分な説明なしに、発電時に二酸化炭素(CO2)を出さないことだけをとらえて『クリーン』と表現すべきではない」と結論づけ、電事連に通知した。

 申し立てによると、広告は昨年4月発行の雑誌に掲載された。男性は翌月、JAROに「事故時の放射能汚染の危険性があり、到底クリーンとは言えない」と申し立て。電事連は「発電の際にCO2を出さないという特長をクリーンと表現した」と説明していた。

 裁定には法的拘束力はなく、広告内容を変更するかは広告主の判断に任される。電事連は「裁定を受けたのは事実だが、中身についてはコメントできない」としている。

 神奈川県の苦情申し立て人が言われる通り、「事故時の放射能汚染の危険性があり、到底クリーンとは言えない」ことは言うに及ばない事実である。

 日本でも東海村のJCO事故はじめ過去、数多くの原発事故が起きている。

 海外では米国のスリーマイルズ島原発事故、ウクライナのチェルノブイリ原発事故など深刻な原発事故が起き、広範囲にわたり深刻な放射能汚染が起きている。

 さらに原発で使用済みの核燃料の再処理を巡り、イギリスのセラフィールド核燃料処理工場では膨大な量のプルトニウムが環境中に放出されている。

 ※主な原発事故

 今回、JAROが出した「原子力発電にクリーンという表現を使うことはなじまない」という裁定は、至極もっともなことである。

 冒頭述べたように、日本の新聞やテレビなどの大メディアが一大広告主である電事連や原子力産業会議、さらに東京電力などに気を遣い、原発事故や核燃料サイクルに関わる様々な問題をまともに報道せず、取り上げてこなかったことこそ重大問題であるといえるが、今回のJAROの裁定は遅きに失したとは言え、広告主だけでなくメディアに対しても、大きな影響を与えるものと期待できる。

 電力会社は一般の私企業と異なる公益事業であり、電気事業法にもとづく電気の供給義務だけでなく、国民の健康、安全、環境問題に正面から取り組むべき義務を負っている。

 にもかかわらず、全国各地の原発立地や原発稼働に関わる問題では、情報の公開、説明責任、企業の社会的責任を果たしているとは言えない。各地で起きている原発訴訟をみても、そのことが言える。

社団法人日本広告審査機構
Japan Advertisement Review OrganizationJARO(ジャロ))

 JAROは日本の社団法人であり、広告に対する苦情や疑問点(ウソ、誇大、わかりにくさなど)を受け付け、審査する機関である。公正取引委員会の様に法的措置を取るのではなく、制作者に注意を呼びかける。JAROをもじったテレビCMでよく知られている。なお、法的な処置は取れないためそのような場合は公正取引委員会が好ましい。

 事務局は東京(東日本地区)、大阪(西日本地区)の2カ所に所在するが、名古屋(東海地区)、札幌(北海道地区)にもその地域専用の電話を設置している。

 公共広告機構(AC)、放送倫理・番組向上機構(BPO)同様、CMのスポンサー企業が広告を自粛した際やCM枠が余った際にJAROのCMが代わりに放送されることが多く、震災、天皇崩御、テロの際や深夜・早朝で頻繁にCMを目にすることがある。ACやBPOのCMはNHKでも放送されることがあるが、JAROのCMはNHKでの民間の広告放送がないため、放送されていない。

 JAROには年に約9,000件の苦情が寄せられ、広告主に改善を求める。ただし政治・宗教関連及び裁判中の広告は取り扱えない。また、競馬予想会社の広告など、ギャンブルに関する広告も扱っていない。

 現在の理事長は、時事通信社元社長の村上政敏。

 JAROの裁定には法的拘束力はない。しかし、電事連は原発=温暖化防止=クリーンなエネルギー源という、短絡的な情報操作による世論誘導的な広告を厳に慎むべきである。

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悪夢のブッシュ8年、腐っても鯛となれるかオバマ新政権  青山貞一


悪夢のブッシュ8年
腐っても鯛となれるか
オバマ新政権


青山貞一


掲載月日:2009年1月22日

■ブッシュ政権、悪魔の8年間

 米国と言えば、ブッシュ大統領の8年、とくに「9.11」と呼称される2001年9月11日以降、米国はいわゆる単独行動主義を鮮明にし、アフガン、イラクに大量の軍隊を投入した。しかもブッシュ政権には、大統領自身がそうであるように石油、天然ガス利権に満ちた閣僚が多数存在していた。

 
振り返ってみると、ブッシュ政権の8年間は、米国民のみならず世界各国のひとびとにとり「悪魔の8年」であったに違いない。世界はわずかひとりの人間に生活、環境、経済、金融はては戦争でかき回されたものだ。

 
これは第二次世界大戦の欧州におけるナチス・ドイツのアドルフ・ヒットラー以来の事かも知れない! よくもまぁ、米国民はこんな酷い大統領を選んだ、と思うが、同じ事がドイツのヒットラーについても言えるから、まさに歴史は繰り返すのだろう。

 
とりわけ世界各国を巻き込み「対テロ戦争」、「テロとの戦い」の名の下に行われたアフガンそしてイラク戦争は、なんのことはない、ブッシュ政権とその仲間によるエネルギー新植民地主義、さらにエネルギー新帝国主義とでもいえる侵略戦争の様相を強めたものであったと云っても過言ではないだろう。

◆青山貞一:長編コラム 正当性なき米国のイラク攻撃
◆青山貞一:エネルギー権益からみたアフガン戦争、「世界」、岩波書店 

 しかも、ブッシュ政権はアフガンやイラクへの米軍駐留費や戦後復興費用の多くを日本に求め、日本政府はろくにまともな国会審議をするまもなく、これに応じている。以下の申し入れはいずれも私達が日本政府に対しおこなったものである。

◆正当性なき米国のイラク攻撃への日本政府の支持撤回の意見申し入れ  
◆日本政府へのイラク戦後復興拠出の不支持の意見申し入れ
◆自衛隊イラク派兵を勇気を持って断念させる意見申し入れ  

 
さらに2008年12月も押し迫ってからイスラエルによるガザ地区への衝撃的な殲滅攻撃は、ブッシュ政権の了解なしに行われるはずもないものであった。事実、2009年1月19日、ブッシュ政権の終焉とともに、ピターッとガザ攻撃は停止した。その間、何の罪もない幼児、子供、おとり寄りを含む1300名もの命が一方的なイスラエル軍の攻撃により命を落としたのである。

◆青山貞一:イスラエルが攻撃を突然止めた2つの訳
◆青山貞一:「ならず者国家」イスラエルは、いかに軍事大国化したか?

 
数年前、「サブプライムローン」という言葉を聞いたとき、それは一見して米国低所得者層への住宅政策の一種のように思われた。サブプライムローンは不動産担保商品とよばれたが、2006年債券化され世界中にまかれた「サブプライムローン」の価値が急激に下落、2007年になって「サブプライムローン問題」が顕在化するに及んだ。

青山貞一:<緊急解説>米サブプライムローン問題、一層の深みに

 
そして2008年秋の米国大手投資銀行、リーマンブラザースが倒産するに及んで、この「サブプライムローン」システムは低所得者層にリーズナブルで良質な住宅を提供するための政策ではなく、結果的に米国の格差社会を拡大し、世界中を金融危機に陥れる時限爆弾であることが分かったのである。

 
それより前、世界的な株安が進行し、米国を中心としたヘッジファンドや投資銀行は先物原油や先物穀物などに投資先の照準を絞った。これにより原油価格、ガソリン価格、灯油などの価格が世界各地で急騰し、世界中の人々の生活を窮地に追い込んだ。

 
さらに問題はこれだけではなかった。上記の先物取引、すなわち従来のデリバティブに加え、クリントン政権末期に議会がこぞって賛成した金融票品の自由化の結果できたCDSが、あらゆるものを投機、賭の対象としてしまったのである。その意味ではクリントンにも大きな責任があると言える。

 ※CDS クレジット・デフォルト・スワップ (credit default swap)
    - クレジットデリバティブ商品の一種。


 CDS関連商品の元本想定金額の世界総計

  • 2001年6月末 6315億$
  • 2001年末 9189億$
  • 2002年末 2.2兆$
  • 2003年末 3.8兆$
  • 2004年末 8.4兆$
  • 2005年末 17.1兆$
  • 2006年末 34.5兆$
  • 2007年6月末 45.5兆$
  • 2007年末 62.2兆$
 上記を見れば分かるように、バブル絶頂期の2007年末にはCDS関連商品の元本想定金額は、全世界で実に6,220兆円にも達していたことが分かる。

 
ブッシュ政権になって金融取引に関わる規制は一層緩和され、史上空前のバブルに突入した。そこではカネがカネをよぶ空前の金融経済が我が物顔で跋扈していたのである。

 すべてが右肩上がりで価格上昇するとすれば、持ち金の10倍、20倍はおろか100倍、200倍のデリバティブを行ってもリスクは感ぜず、逆に一夜にして億万長者となれるという夢に酔いしれたのである。

 
だが、リスクを負うことなく巨大な利益を得られる道理がない。

 
いつの世にあっても、このような錬金術は何時までも続かない。まして米国だけでなく世界中の投資家が引き時をわきまえないなかで、突如、バブルがはじけ、一気に100年に一度の金融危機が襲来したのである。
 
 
これらは、自分たちの私利私欲のために世界各国をアフガン、イラク戦争に巻き込んだブッシュ大統領や閣僚が、抱え込んだ米国の財政赤字解消策と無縁ではない。すなわち、ブッシュ政権は、巨額の戦費を拠出するためにバブル景気、それも実体経済と無縁にカネを捻出する金融資本主義的バブルを徹底して推し進めてきたのである。

 
かくして2008年春に始まった「サブプライム・ローン・バブル」の完全崩壊に端を発する株価の激落は、機関投資家を先物原油や先物穀物への投資に向かわせた。その結果、本来1バレル当たり50-60米ドルであった原油を7月には147ドルまで暴騰させたのである。エネルギー権益に満ちたブッシュ一族は実はここでも利権を得ていたのである。

◆青山貞一<緊急報告0>外交なき「油上の楼閣」ニッポンの行く末は暗澹
青山貞一<緊急報告1>まったなし!「油上の楼閣」を崩壊する原油高騰
◆青山貞一<緊急報告2>世界的株下落が投機マネーを先物原油に向ける
青山貞一<緊急報告3>今後も原油先物価格の高騰は続くのか?
青山貞一<緊急報告4>原油価格が下落してもガソリン価格は依然高値!


 
本来、世界中の生活や生産のもととなる原油を投機の対象としたWTI先物原油へのヘッジファンドなど機関投資家のカネの集中を米国政府は監視し、規制すべきであった。実際、米国下院の民主党はそのような法案を提出していたが、ブッシュ政権は法案化を阻止し、それがきっかけとなり先物の原油や穀物価格は暴騰したのである。

◆青山貞一<緊急報告0>外交なき「油上の楼閣」ニッポンの行く末は暗澹

 
同時期、ブッシュはガソリンにエタノールを混合させる燃料をトウモロコシなど穀物を原料に製造する政策を具体化した。その結果、先物穀物価格が暴騰し、それに端を発した食物価格の高騰は、貧しい途上国の人々だけでなく、格差社会のもと日々の生活もままならない人々を直撃した。

◆青山貞一:世界的な穀物・原油暴騰の元凶は米国だ

 
間違って当選したブッシュだが、その後の8年を見ると、ブッシュがしたことの多くは、無謀な規制緩和による弱肉強食の大企業や金持ちの徹底優遇、中東の天然ガスや石油を世界を巻き込む侵略戦争による搾取、そのための巨額の戦費による財政悪化、挙げ句の果ては米国初のサブプライムローンのシステム崩壊による世界的金融、経済危機の招来と、踏んだり蹴ったりであった。

 
これは世界各国に対し劇的な悪影響をもたらすだけでなく、本場米国の国民にあっても同様だったはずだ。ごく一部の富裕層や金融バブルの恩恵を受けたものを除けば、圧倒的多くの米国民にとっても悪夢の8年であったに違いない。


■政権交代のない腐りきった日本の政治

 そんなブッシュ政権にひたすら追随、盲従してきたのが日本だ。

 
米国の巨額な戦費を米国債の購入だけでなく、アフガン、イラクへの戦後復興の名の下での巨額財政支援を積極的に行ってきたのは小泉総理以来の日本である。

◆正当性なき米国のイラク攻撃への日本政府の支持撤回の意見申し入れ  
◆日本政府へのイラク戦後復興拠出の不支持の意見申し入れ
◆自衛隊イラク派兵を勇気を持って断念させる意見申し入れ  

 
周知のように日本では小泉氏がマスメディアを使って行った情報操作による世論誘導による郵政民営化選挙で衆議院議員の2/3に迫る議席をとって以来、ブッシュ政権への盲従を一段と強めた。

 
小泉氏は政権途中で安倍、福田に総理の座を実質禅譲した。しかも正当性も正統性もない安倍、福田政権は、それぞれわずか1年で政権を放り出し、その後、またまた実質禅譲によってトンデモの麻生政権が誕生した。この間、一切総選挙はない。

◆青山貞一:「世界透明度」ランキング、日本は議員の世襲などで18位
◆青山貞一:大マスコミが報じない自民議員過半が二世三世議員

 
民主主義の根幹をなす民意を無視し、ひとたび世論操作で得た多くの議席をもとに、小泉、安倍、福田、麻生の各政権はブッシュ政権同様日本を壊してきたのである。

 
これら小泉、安倍、福田、麻生の各政権に共通していることといえば、いうまでもなく二世、三世の国会議員である。まさに「親の七光り」そのものである。

 
国会議員としての資質をもっているとは思えない三百代言的政治家、小泉氏、幼稚で稚拙な右翼思想をもった安倍氏、それにまったくリーダーシップをもたない不作為の福田氏、どれも首相、総理以前に国会議員としても不適格者と言われても仕方ない人ばかりだ。

 
日本はブッシュが政権にいた8年の間、そんなトンデモの宰相を総理としてきたのである。親の七光り、二世、三世、さらに安倍、福田、麻生に至ってはまったく国民の審判を得ないで総理となった「日本の民主主義の民度を象徴する人物」である。


■腐っても鯛の米国となれるかオバマ新政権

 ブッシュのやりたい放題、悪夢の8年を米国や世界は経験した。

 しかし、そこはチェック・アンド・バランスの国、米国は「腐っても鯛」であるはずだ。 バラク・オバマ氏が圧倒的大差でマケイン候補破り第44代の米国大統領に当選した。

 オバマ氏はアフリカ系黒人の血を引く政治家だ。オバマ氏はわずか上院議員一期で黒人初の米国大統領になった。コロンビア大学、ハーバード大学ロースクールを卒業した弁護士でもあるというから、エリートには違いないが、米国民が選んだ米国のブランドニューのリーダーである。

 米国は建国以来の危機にあることは間違いないが、その頂点で親の七光り、二世、三世でない、アフリカ系黒人を米国民はリーダーに選んだのである。

 腐っても鯛の米国、およそ民主主義から程遠い世襲で民意をまったく反映しない総理をいただく腐りきった日本である。

 だが、現在直面している金融、経済危機は、それこそ100年に一度クラスのものであって、経済、金融、外交などいずれも素人といわれるオバマ大統領が、果たしてどこまでやれるかは未知数である。

 巨額の財政出動は、当然のこととして累積財政赤字を増やす。日本はこれ以上ないほどの財政赤字に悩んでいるが、今後、財政赤字の兄弟となりかねない。

 またアメリカの成長物神、それも物的な成長にとりつかれた価値観やライフスタイルをそのままに、果たして持続可能な社会はできるはずもない。ブッシュは京都議定書から脱退したように、経済成長至上主義だった。オバマは環境に力を入れると言っており、財政出動の予算案も準備している。

 しかし、経済・技術至上主義的な「環境」主義は、ダボス会議における世界の環境保全力ランキング結果を見るまでもなく、必ず破綻する。

 「環境」は技術や経済で汚染を押さえ込むことより、まさに私達が物質的な「成長の限界」を強く認識し、技術や経済に極度に依存しないサステイナブルな生き方を実現することが最も重要なのだから。

青山貞一:世界の「環境保全持続力」ランキング AISブログ
 

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世界の知性は「テロ」の本質をどうみるか  青山貞一

◆N.チョムスキー(マサチューセッツ工科大学教授)

 米国、とりわけブッシュ政権の対外政策に痛烈な批判を浴びせ続けてきた世界の知性、マサチューセッツ工科大学のノーム・チョムスキー教授は、米国をして世界最大の「ならずもの国家」と公言してはばからない。

 今年、80歳になるチョムスキー教授は、ベトナム戦争以来の米国の外交政策を痛烈に批判している。 

 いわゆる「9.11」以降、チョムスキーの史実に基づいた言論は海外はもとより米国内でも高い評価を得ている。ロックバンドU2のボーカル、ボノはチュムスキーを飽くなき反抗者と呼んでいる。闘う言語学者、それがノーム・チョムスキーである。 

  イラクとの「対テロ戦争」をめぐる米国の対外政策についてのインタビューにチョムスキーは、次のように明快に答えている。 

  第一に、「対テロ戦争」という言葉を使うにあたっては多大な注意が必要です。そもそもテロに対する戦争というものはあり得ません。

 論理的に不可能なのです。

 しかも、米国は世界最大のテロリスト国家です。

 ブッシュ政権で政策決定に係わっている人々は国際法廷でテロとして批判されてきた人々です。

 米国が拒否権を発動しなければ(このとき英国は棄権しています)、安保理でも同様の批判を受けていたはずの人々なのです。

 これらの人々が「対テロ戦争」を行うなどということはできません。問題外です。

 これらの人々は、25年前にもテロリズムに対する戦争を宣言しています。しかし、私たちはこれらの人々が何をしたかを知っています。

 中米諸国を破壊し、南部アフリカで150万人もの人々を殺害する手助けをしてきたのです。他の例もあげることができます。

 ですから「対テロ戦争」などというものはもともと存在しないのです。

 「テロリズムはどう定義するのか」というインタビューの質問に対し、チョムスキーは次のように答えている。 
      
 テロとは他者が『われわれ(米国)』に対して行う行為であり、『われわれ(米国)』がどんなに残虐なことを他者に行っても、それは『防衛』や『テロ防止』と呼ばれるのである、と。

 以下は、チョムスキーがインタビューに答える形で話した「米国の対テロ戦争」と「米国のイラク攻撃」の全文である。長文ですがぜひ読んで欲しい。
  「対テロ戦争」:チョムスキー・インタビュー 2002年7月3日

◆イクバール・アフマド(思想家)

 チョムスキー教授の友人にイクバール・アフマド氏(Eqbal Ahmad)がいた。ノーム・チョムスキーやE.サイードの盟友でもあるそのイクバール・アフマドは「テロ」にどう言及しているのであろうか?
 
 アフマドは1999年11月にイスラマバードで病気でなくなっているが、彼は「9.11」が起る3年前の1998年、「テロリズム---彼らの、そして、わたくしたちの」と言う講演のなかで、テロリズムについて非常に示唆に富んだ話をしている。

 当時刊行されたイクバール・アフマド発言集「帝国との対決」(太田出版03-3359-626)、大橋洋一・河野真太郎・大貫隆史共訳)から以下に核心部分を引用する。

 まず第一の特徴的パターン。それはテロリストが入れ替わるということです。昨日のテロリストは今日の英雄であり、昨日の英雄が今日のテロリストになるというふうに。

 つねに流動してやまないイメージの世界において、わたしたちは何がテロリスムで、何がそうではないかを見分けるため、頭のなかをすっきり整理しておかなければなりません。

 さらにもっと重要なこととして、わたしたちは知っておかねばならないのです、何がテロリズムを引き起こす原因となるかについて、そしてテロリズムをいかにして止めさせるかについて。

 テロリズムに対する政府省庁の対応の第二のパターンは、その姿勢がいつもぐらついており、定義を避けてまわっていることです。

 わたしはテロリズムに関する文書、少なくとも20の公式文書を調べました。そのうちどれひとつとして、テロリズムの定義を提供していません。

 それらはすべてが、わたしたちの知性にはたらきかけるというよりは、感情を煽るために、いきりたってテロリズムを説明するだけです。

 代表例を紹介しましょう。

 1984年10月25日(米国の)国務長官のジヨージ・シュルツは・ニューヨーク市のパーク・アヴェニュー・シナゴーグで、テロリズムに関する長い演説をしました。

 それは国務省官報に7ぺージにわたってびっしり印刷されているのですが、そこにテロリズムに関する明白な定義はひとつもありません。その代わりに見出せるのは、つぎのような声明です。

 その一、「テロリズムとは、わたしたちがテロリズムと呼んでいる現代の野蛮行為である」。

 その二はさらにもっとさえています。「テロリズムとは、政治的暴力の一形態である」。

 その三、「テロリズムとは、西洋文明に対する脅威である」。

 その四、「テロリズムとは、西洋の道徳的諸価値に対する恫喝である」。

 こうした声明の効果が感情を煽ることでなくしてなんであろうか、これがまさに典型的な例なのです。

 政府省庁がテロリズムを定義しないのは、定義をすると、分析、把握、そして一貫性を保持するなんらかの規範の遵守などの努力をしなければならなくなるからです。

 以上がテロリズムヘの政府省庁の対応にみられる第二の特徴。

 第三の特徴は、明確な定義をしないまま、政府がグローバルな政策を履行するということです。

 彼らはテロリズムを定義しなくとも、それを、良き秩序への脅威、西洋文明の道徳的価値観への脅威、人類に対する脅威と呼べばいいのです。

 人類だの文明だの秩序だのを持ち出せば、テロリズムの世界規模での撲滅を呼びかけることができます。

 要約すれば、米国なり西洋が使うあらゆる暴力はテロリズムとは言わず、米国なり西洋が被る暴力はすべてテロとなるということである。

 これはチョムスキー教授の言説と共通している。すなわち

 「テロとは他者が『われわれ(米国)』に対して行う行為であり、『われわれ(米国)』がどんなに残虐なことを他者に行っても『防衛』や『テロ防止』と呼ばれる」

のである。

 ここに今日の米国やイスラエルの対テロ戦争や対大量破壊兵器戦争の大きな課題が集約される。

 米国やイスラエルが自分たちがいくら核兵器や大量破壊兵器をもち、使ってもそれは自由と民主主義を守る正義の戦いとなり、中南米、カリブ諸国にCIAや海兵隊を送り込み他国の政府を転覆したり、要人を殺傷しても、またイスラエルがパレスチナを攻撃しても、けっしてそれはテロとは言わないのである。

 イクバール・アフマドの経歴について
 イクバール・アフマド(Eqbal Ahmad)著作集について 

◆ウゴ・チャベス(ベネズエラ大統領)

 歯に衣着せず痛烈にブッシュ政権を批判するラテンアメリカの旗手、ベネズエラのウゴ・チャベス大統領は、2006年9月、ニューヨークの国連本部で行った演説のなかで、ノーム・チョムスキー教授の著作を片手に、ブッシュ政権の脅威について次のように明快に語っている。

 私が悪魔と呼んだ紳士である大統領(ブッシュ大統領のこと)は、ここにのぼり(注:国連本部の演壇)、まるで彼が世界を所有しているかのように語りました。全くもって世界の所有者として
...

 米国大統領が見渡すいかなる場所にも、彼はたえず過激派(テロリスト)を見ます。

 そして我が友よ――彼は貴方の色を見て、そこに過激派(テロリスト)がいる、と言います。

 ボリビアの大統領閣下のエボ・モラレスも、彼にとって過激派(テロリスト)に見えます。

 帝国主義者らは、至る所に過激派(テロリスト)を見るのです。

 もちろん、我々が過激派(テロリスト)であるなどということはありません。

 世界が目覚め始めている、ということです。

 至る所で目覚めています。そして人々は立ち上がり始めています。

 私の印象では、世界の独裁者は残りの人生を悪夢として過ごすでしょう。

 なぜなら、我々のように米国帝国主義に対抗する全ての者たちや平等や尊重、諸国の主権を叫ぶ者らは立ち上がっているのだから。

※ベネズエラ大統領チャベスの国連における大演説全文(2006年演説全容)
※チャベス大統領 国連演説全容(2005年演説全容) 日刊ベリタ
※ベネズエラ大統領チャベスの国連における大演説全文(2005年演説全容) 

◆佐藤清文(批評家)

 アラビア語で「情熱」や「闘魂」という意味の「ハマス」について報道されるとき、日本のメディアは「イスラム原理主義組織」と報道していますね?

 しかし、アルジャジーラを含め、アラブのメディアでは「パレスチナ抵抗軍」と報道するのが常です。

 実際、そう訳さないのは不正確なのです。ニュースは一つの報道だけでなく、多様な見方を意識していないとといけないのですが、日本の報道機関がアメリカ向きだというのはこういうところからもわかります。

 こういうところから直していかないと、本当の国際的な眼は養われませんね。

注)ハマース
ハマース、正式名称はイスラーム抵抗運動(Harakat al-Muq?wama al-Islamya)といい、各単語のアラビア文字の頭文字を取って(ハマース、アラビア語で「熱情」という意味)と通称される。 Wikipedia

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悪夢のブッシュ政権八年、腐っても鯛の米国と腐り切る日本    青山貞一

 米国と言えば、ブッシュ大統領の8年、とくに2001年9月11日以降の米国は、単独行動主義を鮮明にしアフガン、イラクに大量の軍隊を英国などを巻き込み投入した。ブッシュ政権は、大統領自身がそうであるように石油、天然ガス利権に満ちた閣僚が多数存在していた。

 かくしてブッシュ政権の8年は、米国民のみならず世界各国のひとびとにとって、まさに悪魔の8年であったに違いない。

 米国だけでなく世界各国を巻き込み対テロ戦争として行われたアフガンそして、イラク戦争は、なんのことはない、エネルギー新植民地主義、さらにエネルギー新帝国主義とでもいえる侵略戦争の様相を強めただけであったと云っても過言ではないだろう。

◆青山貞一:長編コラム 正当性なき米国のイラク攻撃
◆青山貞一:エネルギー権益からみたアフガン戦争、「世界」、岩波書店 


 当初、サブプライムローンは、一見して米国の低所得者層への住宅政策のように思われた。しかし、2006年にサブプライムローン債権が価格下落に転じ、2007年になって世界的にサブプライムローン問題が顕在化するに及び、このサブプライムローンシステムがけっして低所得者層に住宅を提供するための政策などではないことが分かったのである。

 それは私利私欲のために世界各国をアフガン、イラク戦争に巻き込んだブッシュ大統領や閣僚が、挙げ句の果てに抱え込んだ米国の財政赤字解消戦術と無縁ではない。

 ブッシュ政権は、巨額の戦費を拠出するためにバブル景気、それも実体経済と無縁にカネを捻出する金融資本主義的バブルを徹底して推し進めてきたのである。

 そして2008年春に始まったサブプライムローンバブル崩壊に端を発する株価の激落は、機関投資家を先物原油や先物穀物への投資に向かわせた。その結果、本来1バレル当たり50-60米ドルであった原油を7月には150ドル弱まで暴騰させたのである。エネルギー権益に満ちたブッシュ一族は実はここでも利権を得ていたのである。

 本来、世界中の生活や生産のもととなる原油を投機の対象としたWTI先物原油へのヘッジファンドなど機関投資家のカネの集中を米国政府は監視し、規制すべきであった。実際、米国下院の民主党はそのような法案を提出していたが、ブッシュ政権は法案化を阻止し、それがきっかけとなり先物の原油や穀物価格は暴騰したのである。

◆青山貞一<緊急報告0>外交なき「油上の楼閣」ニッポンの行く末は暗澹

 同時期、ブッシュはガソリンにエタノールを混合させる燃料をトウモロコシなど穀物を原料に製造する政策を具体化した。その結果、先物穀物価格が暴騰し、それに端を発した食物価格の高騰は、貧しい途上国の人々だけでなく、格差社会のもと日々の生活もままならない人々を直撃した。

 ブッシュがアル・ゴアと闘った大統領選で間違って当選したブッシュだが、その後の8年を見ると、ブッシュがしたことの多くは、無謀な規制緩和による大企業や金持ち優遇、中東の天然ガスや石油を世界を巻き込む侵略戦争による搾取、そのための巨額の戦費による財政悪化、挙げ句の果ては米国初のサブプライムローンのシステム崩壊による世界的金融、経済危機の招来と、踏んだり蹴ったりであった。

 これは世界各国に対し劇的な悪影響をもたらすだけでなく、本場米国の国民にあっても同様だったはずだ。ごく一部の富裕層や金融バブルの恩恵を受けたものを除けば、圧倒的多くの米国民にとっても悪夢の8年であったに違いない。

......

 そんなブッシュ政権にひたすら追随、盲従してきたのが日本だ。

 米国の巨額な戦費を米国債の購入だけでなく、アフガン、イラクへの戦後復興の名の下での巨額財政支援を積極的に行ってきたのは小泉総理以来の日本である。

 ところで、周知のように日本では小泉氏がマスメディアを使って行った情報操作による世論誘導による郵政民営化選挙で衆議院議員の2/3に迫る議席をとって以来、ブッシュ政権への盲従をさらに強めた。

 小泉氏は政権途中で安倍、福田に総理の座を実質禅譲した。しかも正当性も正統性もない安倍、福田政権は、それぞれわずか1年で政権を放り出し、その後、またまた実質禅譲によってトンデモの麻生政権が誕生した。この間、一切総選挙はない。

 民主主義の根幹をなす民意を無視し、ひとたび世論操作で得た多くの議席をもとに、小泉、安倍、福田、麻生の各政権はブッシュ政権同様日本を壊してきたのである。

 これら小泉、安倍、福田、麻生の各政権に共通していることといえば、いうまでもなく二世、三世の国会議員である。まさに「親の七光り」そのものである。

 国会議員としての資質をもっているとは思えない三百代言的政治家、小泉氏、幼稚で稚拙な右翼思想をもった安倍氏、それにまったくリーダーシップをもたない不作為の福田氏、どれも首相、総理以前に国会議員としても不適格者と言われても仕方ない人ばかりだ。

 日本はブッシュが政権にいた8年の間、そんなトンデモの宰相を総理としてきたのである。親の七光り、二世、三世、さらに安倍、福田、麻生に至ってはまったく国民の審判を得ないで総理となった「日本の民主主義の民度を象徴する人物」である。

......

 ブッシュによるやりたい放題、悪夢の8年を米国や世界は経験したが、そこはチェック・アンド・バランスの国、「腐っても鯛」である。

 昨日、バラク・オバマ氏が圧倒的大差で第44代の米国大統領に当選した。

 オバマ氏はアフリカ系黒人の血を引く政治家だ。オバマ氏はわずか上院議員一期で黒人初の米国大統領になった。

 コロンビア大学、ハーバード大学ロースクールを卒業した弁護士でもあるというから、エリートには違いないが、米国民が選んだ米国のリーダーである。

 米国は建国以来の危機にあることは間違いないが、その頂点で親の七光り、二世、三世でもない、しかもアフリカ系黒人をリーダーに選んだのである。

 腐っても鯛の米国、およそ民主主義から程遠い世襲で民意をまったく反映しない総理をいただく日本。

 日本でも大統領制をと言いたいところだが、最低限すぐさま総選挙を実施して欲しいものだ!
 

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静岡県知事の強権的な行政手法で頓挫する静岡空港:開港延長!?   青山貞一

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 静岡県は、空港だけでなく、第二東名など、このご時世に不要・不急の公共事業を環境問題や財政問題を無視して強引している珍しい自治体だ。

 静岡空港についても、石川静岡県知事は、県民に耳をかさず一方的、強権的にハコモノ事業を推進してきた。

 当然、裁判が頻発し、当初予測した将来乗降客数も下方修正を繰り返し、さらにその修正値ですら達成が困難となると、県内民間企業の航空貨物など物流分野で体裁をとりつくろうとしている。

 静岡空港の建設に反対してきた住民団体でなくとも、エェー静岡に空港なんているのと、日本中の失笑の的となっている。静岡空港建設事業は今や不要な公共事業の代名詞とさえ、されている。

 地元で「天皇」と揶揄されるように、傲慢で強引な行政手法で知られる石川静岡県知事は、この間、地元住民、県民、その道の専門家が何を言おうと一切、耳を貸さずに、愛知県と東京都の間で巨大な空港を強引に建設してきた。

 以下は、石川知事の強引、強権的な空港建設に抗議し、2007年2月6日、静岡県庁前で焼身自殺を図った井上英作氏の時世の抗議文である。

石川嘉延に、抗議文

 石川嘉延に物申す。貴様は、静岡県民の意思に反して静岡空港建設を推し進め、 今は、農民から無理やり、権力を使って土地を取り上げ、又、反対する多くの支援者をも無視して、力ずくで排除し、何の必要も無い、永久に税金を無駄遣いする空港を、 嘘八百を並べ立てて、さも役に立つ空港であるかのように偽装し、県民を騙し、 犯罪者となんら変わらないゼネコンを使い、癒着し、県民に百年の禍根を残すその所業は赦しがたい。よって、我が命を捨ててその悪行を糾弾する。 静岡県民 井上英作

 今、地球は危機的な状況にあり、このような環境破壊に金を使うべきではなく、 間近に迫っている温暖化への対策に金を使うべきなのだ。

 地球市民 井上英作  終わり。
 註:石川嘉延氏は静岡県知事(現職)。

 以下はそれを報ずる毎日新聞の記事である。

◆焼身自殺>静岡県庁前で 空港建設に抗議か
毎日新聞
 6日午前3時50分ごろ、静岡市の県庁別館北側の歩道で、「黒い煙と火柱が立っている」と通報があり、消火後、成人男性の焼死体が確認された。近くの原付きバイク前かごから静岡空港建設に反対する知事あての抗議文などが見つかった。死亡したのは静岡市葵区の自営業、井上英作さん(58)で焼身自殺とみて調べている。

 ところで日本とカリフォルニア州の面積はほぼ同じである。その日本には100を超える空港がある。単純平均すれば都道府県ひとつに、2つの空港があることになる。一方、カリフォルニア州にはわずか16しか空港がない。

 新幹線があり、国土幹線自動車道の東名高速があり、しかも第二東名まで作っているのに、なぜ、環境破壊と累積債務が次世代に残る空港がいるのか? まともな日本人なら皆首をかしげるだろう。

 実は今から 年前、中村敦夫参議院議員(当時)、佐藤謙一郎衆議院議員(当時)はじめ衆参6名の国会議員と私で、現地住民のご案内で静岡空港の建設現場を視察した後、静岡県庁の知事室に出向き、石川知事と1時間ほど議論したことがある。 

Image21  公共事業チェック議員の会の会長だった中村議員らが空港建設の見直し請し、同時に土地の強制収用を辞めるよう申し入れたのに対し、石川知事は、「今更、何をしに来たのか」という態度で対応した。

 当時、国は自治体からの要望により土地収用法を一部改正し、強制収用がし易くなる改正をしている最中であった。東京都は日の出町の広域最終処分場建設を巡り、静岡県は静岡空港建設を巡り、国の動きに呼応し、法改正を国に強く要望していた。

Image41  静岡空港建設に関連し静岡県は、空港の滑走路の地下を走る新幹線に対し、空港駅を設置するようJR東海に要望していた。当日、私たちはJR東海の幹部に面接し、事情を聞いた。幹部は静岡県には何度となく、空港駅を設置することはできないと伝えたと言明した。

 にもかかわらず、知事との会談で知事はJR東海が空港下に新幹線の駅を新設してくれるかのような発言を繰り返していた。これにはJR東海も仰天していた。

 知事と国会議員との会談の模様は上の写真にあるようにテレビ各局によって夕方のテレビのニュースで放映された。

 静岡空港建設用地やその周辺には猛禽類のオオタカの営巣が多数見つかった。通常、それだけで建設は中止となるはずだが、静岡県は数1000万円の調査費を専門からに提供し、オオタカの巣は移設が可能というトンデモ結論を誘導し建設を強行してしまった。

.....

 ところで、来年春に開港になると言う静岡空港で、信じられないことが起きた。何と2500mの滑走路の延長線上にある立ち木が航空法の制限高に抵触し、開港できないというのだ。何と、その立ち木は空港建設に反対する住民(地権者)のものであり、勝手に切ることはできないという。

Image611

 以下の毎日新聞の記事を読むと、できあがっている2500mの滑走路を2000mに短縮して暫定使用しようとしているという。もちろん、航空管制関連施設の変更を含む手続が必要となり、そう簡単に済む話しではない。当然、かなりの追加予算が必要となる。

 しかし、これって行政として最低、最悪、無責任きわまりないことでなかろうか?

◆静岡空港:立ち木問題 県会全員協で知事、29日に対応策説明 /静岡
毎日新聞 ◇滑走路短縮案など浮上

 静岡空港西側の私有地に航空法の高さ制限を超える立ち木が残されている問題について、29日開催の県議会全員協議会で石川嘉延知事が対応策を説明することになった。21日の議会運営委員会で県が表明した。ただ、地権者は立ち木の伐採に難色を示しており、予定通り来年3月開港を実現するため、滑走路の短縮案などで事態の打開を図るのか、知事の決断が注目される。【松久英子、浜中慎
哉】

◇地権者、伐採に難色
 9月11日に静岡地裁であった空港事業認定取り消し訴訟で、国・県側が高さ制限を約10メートル超える立ち木が数本残っていることを認め、問題が表面化した。空港は工事が終わった段階で、安全性確認のために国の検査を受けることが義務づけられている。だが、立ち木が残っていると合格しないため、県は当初9月中としていた国への検査申請を、急きょ延期した。11月1日までに申請できなければ、国に出している開港計画を作り直さなければならなくなるため、「来年3月開港」を掲げる県は、がけっぷちに追い込まれている。

 県は9月定例会で、議員からの質問に対し、一貫して「開港に支障のないように努める。詳細については答弁を控えたい」と具体的な方針を打ち出せなかった。
さらにこの日の議運に出席した藤原通孝・総務部長も「申請期限が迫っているため、29日の全員協で対応について説明したい。具体的内容は検討中で、詰めた上で当日説明する」と述べるにとどめ、ぎりぎりまで解決策を模索する考えだ。

 立ち木が期限までに伐採できれば問題は解決する。だが、立ち木の所有者は空港建設に反対し、「測量を誤り、立ち木が残ってしまったミスを県が認めることが先決だ」としており、早急な解決は望み薄だ。行政代執行による強制伐採は時間がかかり、間に合わない。

 その上で、有力な解決シナリオの一つとして浮上してきたのは滑走路の短縮案だ。既に長さ2500メートルの滑走路の工事が終わっているが、それを申請では2000メートル程度に短縮し、立ち木があっても違法にならないようにするというアイデアだ。ある県議は「現在就航が決まっている飛行機のサイズなら、滑走路を短くしても離陸に支障は出ない」とする。

 だが、滑走路を短縮すれば、それに伴う航空灯火などの配置変更などの手続きが必要で、開港が遅れる可能性は残る。航空会社側からも「空港の仕様が変更になれば、投入する航空機の種類を変更する可能性もある」(全日空)、「予定通りの計画を期待しているが、変更するのであれば対応を考えなければならない」(日本航空)などの声が上がっており、29日に表明される県側の対応策を注視している。
毎日新聞 2008年10月22日 地方版

 一方、以下は静岡県知事に対する静岡空港に反対する共有地権者の会の抗議文である。
 
 それを読むと、県が述べていることと事実は違うようだ。

 すなわち、県は立ち木問題を以前から把握していたにもかかわらず、地権者等に対し、何らまともな合意形成をしてこなかった、すなわち誠意ある対応はせず、あいも変わらず強権的な対応をしてきたようだ。

 今になって地権者に泣きついても地権者が分かりましたというわけがない。

 何ともお粗末きわまりない。さらに石川静岡県知事は「県が土地の強制収用の対象外としてきた地権者の樹木が伸びた結果」だという。わずか一年足らずで数m立ち木が伸びるわけがない。

 報道ステーションのインタビューにはエヘラエヘラ、何ともお粗末、杜撰、さらに誠意がまったく感じられない行政対応だ。

 そういえば、中山前国土交通大臣が成田空港建設に関連し、地権者をゴネ得していると発言し、辞任に追い込まれたが、旧自治省出身の知事に対し、開港延期に伴うさらなる税金の不正支出(報道ステーションでは1億円)に関連し住民監査請求、住民訴訟が起こされるのは必至だろう!

2008年9月30日

静岡県知事 石川嘉延殿

空港はいらない静岡県民の会 
静岡空港に反対する共有地権者の会

抗 議
 去る9月22日に行われた定例会見において、知事は空港西側の立木問題に関して以下のように事実をゆがめ、県民を欺く発言をした。われわれは、これに厳重に抗議するとともに、発言を撤回するように要求する。

① 知事は、「航空法の高さを越える立木の存在を1年前から把握していた」と述べたが、われわれはそれ以前から制限を越える立木及び土石の存在を指摘し続けていた。にもかかわらず、県は言を左右にしてその存在に対する認否をこの9月の時点に至るまで行わなかったのである。

② したがって、知事の「地権者との話し合いを続けてきた」との釈明が全くの虚偽であることは明らかである。

③ また、問題が発生した原因は、「07年3月までの段階から木が成長して伸びた」からだという抗弁は、苦し紛れにも程があると言うしかない。わずか1年余で数メートルも伸びるものだろうか。

 以上のように、知事の発言は事実に反し、県民に対する説明責任を放棄したものである。開港を不可能にするほどの問題を生起させた原因は、あげて県の空港建設事業自体、なかんずく、ずさんな測量をもって強権的に収用を急いだところにあ。知事は自らの責任を地権者や反対運動の側に転嫁することなく、この失態を認めて県民に謝罪すべきである。この空港建設は不要・不急の事業の最たるものである。われわれはあくまでも県民の利益となるような県政の実現のために、知事が誠実に県民に説明し、県民と話し合うことを求めてやまない。 

  以下は上記の抗議を報ずる産経新聞の記事である。

◆空港の立ち木問題で抗議 静岡空港反対の市民団体
2008年10月1日8時25分配信 産経新聞

 静岡空港西側の私有地に航空法の規制を超える高さの立ち木が数十本ある問題
で30日、空港に反対する市民団体が静岡県庁を訪れ、石川嘉延知事にあてた抗
議文を提出した。

 文書は「空港はいらない静岡県民の会」(吉本健一代表)「静岡空港に反対する共有地権者の会」(芳賀直哉代表)の連名。石川知事が22日の定例会見で立ち木の存在を「約1年前に把握していた」「これまでも(地権者側と)話し合いをしてきた」などと述べたことなどについて「事実をゆがめ、県民を欺く発言」とし、県民への謝罪と発言の撤回を求めている。

 立ち木は、滑走路の西側約1400メートルにある反対派住民の所有地内にあり、開港手続きに遅れが出る可能性もある。

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世界最大規模のダム:中国・三峡ダムを現地視察する! 青山貞一

 この11月20日から25日にかけ、私が在職する武蔵工業大学環境情報学部と中国の武漢大学(ウ-ハン大学, Wuhan University)との間で行っているSustainable Asiaワークショップが武漢大学であり、でかけてくる。

 日本側からは5名の専任教員と8名の大学院生が参加し、11月21日と22日のワークショップでそれぞれ論文発表を行う。22日午後にワークショップ終了後、武漢から長距離バスで5時間ほどかけ、三峡ダムの現場に行き、23日から1日かけダム及びその周辺地域を現地視察する。

 現地視察終了後、北京林業大学/北京師範大学にも立ち寄る予定である。

 青山貞一は、21~22日、武漢大学で開催されるワークショップで「長崎県諫早湾事業に伴う干拓堤防設置に伴う水質悪化と常時開門による水質改善の可能性」及び「群馬県八ツ場ダム建設による自然環境、財政への影響の実体」について論文発表する予定である。

 なお、武漢大学は4-5万人の学生・教職員を有する中国で最大規模の大学である。 帰国後、「独立系メディア」で現地視察報告をする予定である!

 下の地図は三峡ダムがある中国・長江流域である。ダムは三峡(重慶直轄市から湖北省宜昌市)一帯に建設されている超大型の重力式コンクリートダムである。ダムの位置はThree Gorges Damである。

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 その三峡ダムは、1993年に着工、2009年完成予定。ダム建設の目的は、洪水抑制・電力供給・水運改善としている。完成すれば三峡ダム水力発電所は1,820万kWを発電可能とする世界最大の水力発電ダムとなる。

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 地理的には貯水池は湖北省宜昌市街の上流に始まり、重慶市街の下流にいたる約660kmに渡る。中国政府によると、下流域の洪水を抑制するとともに、長江の水運の大きな利便性をもたらすとされる。

 加えて水力発電所は中国の年間消費エネルギーの1割弱の発電能力を有し、電力不足の中国において重要な電力供給源となる。水力発電は火力発電や原子力発電と比べCO2の発生も抑制することができるとされている。

 しかし、他方で建設過程における住民110万人の強制移転、三峡各地に残る名勝旧跡の水没、さらに水質汚染や生態系への悪影響等、ダム建設に伴う問題も指摘されている。

■武漢大学とは  出典:Wikipedia
 1893年に清の総督張之洞により創立された自強学堂が起源の総合大学。辛亥革命の後北洋政府がそれをもとに1913年国立武昌高等師範学校を創立する。当該大学は、1928年7月に国立武漢大学と正式に名称が制定された。

 1952年、中国高校院系の調整により、武漢大学は中国国家教育部直属の総合重点大学となった。

 中国中央部でも戦略的に重要な湖北省武漢市にあり、風光明媚な珞珈山麓、東湖に面し、広大なキャンパスを誇る。大学も近代的な建物と、旧式の建物が調和し、校内にも水と緑が豊富。春になると日中国交正常化以来植えた大量の桜が咲く。

 国が初めて設立を批准した研究生院の1つでもあり、184の学科において博士学位の授与権、238の学科で修士学位の授与権を所有し、また11の博士課程修了後流動ステーションを所有している。他に20の学科が国家重点学科に指定され、17の学科が国家“211工程”の重点建設学科に列せられている。

現在5000人余りの教員が在籍しており、うち教授・助教授が約3000人、博士生指導教諭が800人となっている。また、中国科学院院士が4人、中国工程院院士が8人、国際欧亜科学院院士が3人在籍。その他、21の学科に“長江学者奨励計画”特別招聘教授の地位を設けている。

武漢大学は30種類の学部があり、様々な分野についてのプログラム、例えば、科学、技術工学、農業、医学、文学、歴史、哲学、法律、経済学、教育学、経営学などについてのプログラムを提供しています。創立以来30万余名の優れた人材を世に送り出し、多くの著名な革命家、政治家、軍事家、科学者、教育家、文学家、芸術家、実業家並びに社会活動家を輩出している。

 1993年の創立百周年記念式典では、ハーバード大学、エール大学、東京大学ほか数多くの大学から祝福された。

 現任学長は劉経南、共産党総支部委員会書記は顧海良。建築面積は389万平方メートルで、学生総数48000余名。 

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仕方がないの論理を超える市民の環境戦略   青山貞一

 この論考は、「環境行政改革フォーラム」2006~2007年度研究発表会予稿集の巻頭言です。

 世界一の土木系公共事業を永年続けてきた結果、日本は国、地方あわせて1000兆円になんなんとする累積債務大国となってしまった。公共事業といえばすぐさまダムとか道路を思い起こすが、一般廃棄物の焼却炉や溶融炉、それに最終処分場など廃棄物関連施設も立派な「公共事業」である。

 極度に中央集権な国家である日本では、中央省庁が補助金と特別地方交付金によって、地方に一律に特定の政策を押し付けることが永年続けられてきた結果、たとえば一般廃棄物を例に取れば、日本は大量生産、大量消費、大量廃棄にとどまらず、世界一の大量焼却、大量埋立て“推進国”となってしまった。

 国の情報公開法が制定、施行される以前、知人の国会議員三名に依頼し、過去、国が市区町村に出した焼却炉、溶融炉などへの国庫補助、それに特別地方交付税の額を調べたら、尋常でない値となっていることが分かった。

 また国から地方への補助率は、補助率が1/2のときで最大で84%、地方単独事業の場合でも60%近くとなっていることが判明した。その結果、この狭い日本全体で膨大な量のゴミが国策として燃やされ、山や海に焼却灰が埋め立てられると言う異常な環境政策が当たり前のように行われてきたのである。

 私たちがアメリカの大学教授から、ゼロ・ウェイストという考えの下で、ほとんどゴミを燃やさず埋め立てない、まさに循環型のゴミ行政を行っているカナダ・ノバスコシア州の存在を知らされたのは5年前のことである。

 連邦分権国家のカナダでは、環境や教育分野で国、すなわち連邦政府が補助金を出すことで、地方の政策をコントロールすることはない。州や市町村は、自分たちならではの理念と政策にもとづき、独自の行政を行っている。

 ノバスコシア州では、市民団体や民間コンサルタントからの政策提言によって、従来とまったく異なった循環型社会経済づくりが行われている。そこでは、ゴミは資源であるという共通認識と、事後処理型(End-of-Pipe)行政ではなく、未然防止型(Front-of-Pipe)の循環型社会経済づくりが市民、NPO、事業者らの全面的な参加によって行われている。

 日本では、中央政府、霞ヶ関の官僚組織が社会をすみずみまで支配し、中央政府によって都道府県など地方行政が一世紀近く蹂躙されたために、住民団体の間では、何を政策提言しても世の中はまったく変わらないという諦めが蔓延している。

 さらに、「政」「官」「業」の癒着や談合型社会だけでなく、本来、社会経済的弱者や物言わぬ環境をアドボケイト(支援)すべき、学者や研究者、報道機関までもが、「政」「官」「業」「学」「報」の現状追認、利権癒着のペンタゴンを形成するに及び、住民団体は「仕方がないの論理」に埋没せざるを得なくなっている。「何をしてもダメ」という「仕方がないの論理」が津々浦々に行き渡ってしまったのである。

 環境行政改革フォーラムは、全国津々浦々でダム・堰建設、海浜埋め立て、道路建設、焼却炉・溶融炉建設などによる環境と財政の破壊に対抗し、体を張ってがんばる住民団体に、「仕方がないの論理を超える市民の戦略」と具体的な戦術、さらに道具を提供してきた。

 争いが行政訴訟や民事訴訟となった場合にも証拠を提出し、証人となって支援してきたのである。支援しているのは、環境行政改革フォーラムに参加する普通の専門家や研究者、弁護士らである。

 さまざまな意味で閉塞状態にある日本だが、日本にもここにきて少しではあるが、変革の兆しが見えてきた。それを持続し発展させるためには、ひとびとが観客民主主義、お任せ民主主義、劇場型民主主義から脱却し、主体的市民として、環境に配慮した持続可能な社会経済づくりにまい進することが問われていると思う。

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世界的に見た日本の環境持続力は30位!?  青山貞一 

 私は1970年から1979年まで「成長の限界」報告で有名な国際的NGO、「ローマクラブ」日本事務局に在籍した。「成長の限界」は先進諸国が豊かで便利な生活を追い求めれば、有限な地球の環境は汚染され資源は枯渇に向かうとその後の時代を予測した。報告書には二酸化炭素の増加による温暖化の顕在化も明示されていた。

 私は1986年、20世紀が経済開発と戦争の世紀であったとするなら、21世紀は環境の世紀とならねばならないと考え、ローマクラブ時代の同僚、池田こみち氏と日本で最初の環境専門のシンクタンク、株式会社環境総合研究所を設立した。以下は日経産業新聞が連載「転機」だ。記事にも”「環境の時代」を確信”とあるように、世界中で間違いなく環境がキーワードとなる時代に突入すると確信したのである。

 ローマクラブの「成長の限界」報告からすでに40年弱が経過し、まさにに人類の危機リポートに示された標準モデル通りに世界は展開していると思える。その後、出されたIPCCの各種報告を見るまでもなく、世界、人類は前代未聞、未曾有の気候変動、地球温暖化も原因すると思える危機に直面しつつある。いやすでに直面している。

 ところで毎年1月末、スイスで開催される世界経済フォーラム ("World Economic Forum"、略称WEF)は、ダボスで開催されるため通称、「ダボス会議」と呼ばれる。ダボス会議には、毎年、世界中の約1000のビッグビジネス・リーダー、大統領、首相など政治リーダー、学者などの知識人、ジャーナリストが参加し活発な議論が繰り広げられている。

 そのダボス会議で毎年、非常に興味深い世界各国の格付け、ランキングが発表されている。英語でEnvironmental Sustainability Index(ESI)、日本語なら環境保全持続力とでもいうべきものだ。より正確に訳せば「環境面から見た持続可能性指標」であり、その指標をもとに世界の140~150カ国を格付けしている。当然、日本も含まれている。ESIの指標を研究開発したのは、米国のニューヨークにあるふたつの名門大学、エール大学とコロンビア大学である。以下に、2001年から2006年の間に公表されたランキングのうち上位10位を示そう。

Environmental Sustainability Index
2000 2001 2002 2005
順位 国名 順位 国名 順位 国名 順位 国名
1 Norway 1 Finland 1 Finland 1 Finland
2 Iceland 2 Norway 2 Norway 2 Norway
3 Switzerland 3 Canada 3 Sweden 3 Uruguay
4 Finland 4 Sweden 4 Canada 4 Sweden
5 Sweden 5 Switzerland 5 Switzerland 5 Iceland
6 New Zealand 6 New Zealand 6 Uruguay 6 Canada
7 Canada 7 Australia 7 Iceland 7 Switzerland
8 Ireland 8 Austria 8 Austria 8 Guyana
9 France 9 Iceland 9 Costa Rica 9 Argentina
10 Australia 10 Denmark 10 Latvia 10 Austria
18 Japan 22 Japan 62 Japan 30 Japan
出典:An Initiative of the Yale Center for Environmental Law and Policy (YCELP) and the Center for I international Earth Science Information Network (CIESIN) of Columbia University, in collaboration with the World Economic Forum and the Joint Research Centre of the European Commission

見て分かるように、上位はフィンランド、ノルウェー、スウェーデンといったスカンジナビア諸国、それにカナダ、ニュージーランド、アイスランド、スイス、オーストリアと言った国々が位置している。2000年に試験的にESIを公表してこの方、2005年までの4回、順位は大きく変わっていない。

 ではわが日本国がどこにいるのか、といえば2000年が18位、2001年が22位、2002年が62位、2005年が20位と、政府がことあるたびに環境立国ニッポンといっているのと著しくかけ離れた結果となっている。ちなみに米国、ドイツも40~50位の辺をさまよっている。

 なぜ、日本がかくも格付けが低いのか? もちろん、ESIは大気汚染、水質汚染、廃棄物、有害物質、自然などなど、膨大なデータと個別指標をもとに掲載し各国をランキングしているから、これで何位になったという決め手が分かるわけではない。しかし、考えられるのは、まず日本の環境保全の能力は、まさに事後救済、対症療法、英語で言えばEnd of Pipe対応、すなわち問題が起きてから膨大な費用をかけ事後的に対策をとる能力である。これに対し、上位にいる北欧諸国やカナダなどは予防原則や未然防止により、もともとある「生地」のすばらしい自然や環境を将来世代のためにリザーブするという環境保全持続能力にすぐれている。

 違った言い方をすれば、日本は Back-end thinking すなわち問題を末端から考え、北欧諸国は Front-end thinking すなわち問題を原因から考えているのである。家に入ったら玄関先に水が漏れているとしよう。日本人はバケツと雑巾をもってくるが、北欧諸国は漏れの原因である蛇口をまず閉めるのである。一端汚染された空気や壊された自然を巨額なお金を掛け浄化したり修復するのが日本の環境保全力であるのに対し、あらかじめ、汚さない、壊さない生活や生産をしているのが北欧型と言えよう。

 もちろん、スウェーデンを例にとればあの広大な土地にわずか800万人しか居住していないという現実はある。しかし、日本が巨額の税金や借金で不要な世界に類例のない規模で道路やダムと言った公共事業を今なお継続している姿は、単に人口密度問題だけではすまないものがあるだろう。もし、日本がEnd of PipeやBack-end thinkingから脱し、Front-end thinking的な生活や生産を実践すれば、間違いなく、環境保全持続力のランキングは上昇するだろう。そんなか2006年のデータが昨年1月末、ダボス会議で公表された。

Environmental Sustainability Index
2006
順位 国名
1 NewZealand
2 Sweden
3 Finland
4 Czech Rep.
5 Unit.Kingdom
6 Austria
7 Denmark
8 Canada
9 Malaysia
10 Ireland
14 Japan
出典:前出

なんと日本が14位にいる。しかし、よく見ると指標が従来のEnvironmental Sustainability Indexではなく、Environmental Performance Indexになっている。「持続可能性」が「成果主義」というか「実績主義」的な指標となっていたのである。

 疑問に感ずるのは、なぜ、両大学がせっかく研究開発し続けてきたESIをEPIに変えたのかである。今のところ、これについてまともな説明が不足している。ただ、ひとつ言えることは指標のなかに長寿が含まれたと聞いた。確かに日本人の長寿は今や世界有数である。しかし、どうだろう。「長寿」が「環境」と相関がないとはいわないが、日本を見ると、高度な医療技術の適用や医薬品の多用などで無理矢理に生かされているという現実を直視せざるを得ない。
 上述のように、日本は依然として対症療法とBack-end thinkingにあり、膨大なカネ、技術、エネルギーを投入して環境をどうにか保全している現実をみるとき、むりやりにEPI指標に変えたのは、何かあったのではないかなどと勘ぐりたくなる。というのも、2006年には従来、一位か二位にいたノルウェーが10位内にいなくなっている。以下の記事にあるように、ノルウェーはごく最近、欧米日本を尻目に、2030年に温室効果ガスの排出ゼロを与野党で合意したばかりの国である。

温室ガス排出、2030年にゼロ ノルウェー与野党合意
朝日新聞 2008年01月18日 
 ノルウェーの与野党は17日、地球温暖化の原因となる二酸化炭素など温室効果ガスの排出を2030年までにゼロにすることを目指すことで合意した。同国は昨年、先進国で初めて50年までに排出ゼロを達成する目標を掲げたが、この時期を大幅に前倒しさせた。
 人口約468万人のノルウェーは、06年の温室効果ガスの排出量は約5400万トン。今後、風力や太陽光発電など代替エネルギーの研究を進めるほか、自国での省エネなどで排出量を3分の2まで減らす。さらに、毎年30億クローネ(約590億円)を投じ、ブラジルの熱帯雨林の破壊阻止や保存など、他国の排出減への協力で自国分を相殺する形で排出ゼロを目指す。ガソリン税も引き上げる。ストルテンベルグ首相は「ノルウェーの政策は世界で最も意欲的だ。この地球温暖化問題への挑戦は、まるで21世紀の『月面着陸』のようだ」と話している。 

 いずれにせよ、今、世界各国に問われているのは、膨大なカネ、技術、エネルギーの投入により無理矢理汚染を押し込める環境保全力ではなく、将来を見据えた持続可能な環境保全持続力である。
 日本の政治、経済の指導者も、はやくBack-end thinkingからFront-end thinkingに思考の転換をはかり、いつまでも官僚主導の「官僚社会主義国家」から脱皮しなければならないことを肝に銘じなければならない。

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